先日、「で、武藤さんは何がきっかけで落語を?」・・・撮るようになったのか、と尋ねられた。
桂文珍師匠による国立劇場大ホールでの10日間連続独演会。4月に入ってすぐ、関西イントネーションの女子から師匠の高座撮影依頼の電話を突然いただいた。「何かの間違いじゃないですか!?」と思わず聞き返す。師匠にお逢いしたのは去年秋の「東京かわら版」の巻頭インタビュー撮影時1度きりで、しかも時間にして1時間程度だったからだ。
過日、高座撮影が終わった後のスタッフ打ち上げの席で冒頭の質問を受けた。話しながら改めて振り返る。雑誌「DIME」の江戸開府400年特集がきっかけで東京かわら版編集部に取材に伺ったのが2003年。翌年夏、かわら版のS嬢から、編集で関わることになったMOOK本「落語ワンダーランド」での撮影を依頼される。そうだ、柳家小三治師匠を撮ったのだ。S嬢は取材前から緊張しっぱなしだったけど、落語未体験も同然な自分は、彼女がなにゆえそんなに緊張するのかわからなかった(後々、緊張するのもさもありなん、と自分もまた緊張するようになった)。そして「東京かわら版」リニューアルによって、表紙巻頭インタビューの撮影を打診されるようになり、それからPONY CANYONの落語CDのジャケットやら噺家さんの書籍やらあれこれほうぼう派生していったんだった。あれからもう7年もたつのか!今じゃすっかり落語を聴きに行くのが趣味になった。
やはり「東京かわら版」の取材で一度お逢いした某師匠のおかみさんから、先日宣材撮影とお子さんの撮影を打診された。そのお子さん撮影のほうを先週してきた。とても心地いい春満開日和で、青空バックに桜の花びらが風に乗ってはらはら散る光景がきれいだった。そしてその師匠ファミリーはすごくあったかくて、ハッピーオーラ出まくりで、撮っていてとても幸せな気分だった。そして「わたしも結婚したいっす〜」な気持ちに拍車がかかる・・・。
人生何は起こるかわからんもんだ。わたしのカメラマン人生も何が起こるかほんとわからない。で、わからないことが面白かったりする。落語とまるで無縁な世界に暮らしていた自分が、きっかけひとつでその世界にのめり込むようになった。今じゃ落語の世界に触れることは生き甲斐のひとつにまでなっている。2003年の取材のとき、ライターのS氏がわたしを抜擢してくれなかったら、かわら版編集部のS嬢とも出逢えなかった。ふたりのSさんに大いに感謝だ。
さて。明日の撮影は夕方前には終わるようなので、久しぶりに林家彦丸さんの勉強会に行ってこよう。連休の入りばなまでは激務が続きそうだから、早く終わる日くらい落語の世界に心を遊ばせてこようかと思う。