フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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日帰り帰省。

 12日が父の68歳の誕生日なので、慌ただしいけど日帰り帰省してきた。

日帰り帰省。_a0025490_0113469.jpg ぽかっと暇ができたらゆっくり帰ろう、友人たちにも逢いたいし、なんて言っていたらいつまでたっても帰れそうもないので、日帰りでも顔を見せないよりはましだろうと早起きして上野駅に向かう。爽快な青空で、この分だと電車から見える太平洋もさぞかしきれいだろう。プレゼントを探しそびれていたので、新宿駅の花屋に寄る。仏壇系ではないおしゃれで大ぶりな菊があったので、それを中心に色数を抑えた花束をこしらえてもらった。なかなかに独創的で面白いこしらえだ。変わったもの好きな父にぴったり。

 上野駅で帰省土産の定番・舟和の芋ようかんを買い、珍しく余裕をもって特急に乗り込む。帰省のおともは村上春樹の「ノルウェイの森」。こないだTさんへのメールに節煙していると書いたら、「いつか『ノルウェイの森』のワタナベ君みたいにスマートな理由で、『面倒臭かったからだよ』なんて言いながら、煙草がやめれればいいのになと思ってます」と返信をもらい、あ、読み直してみようかなと思って本棚の奥から引っぱり出したのだった。学生のときに初めて読んで、その後も何度か読み直したけど、この作品がこれほどまでに支持されるわけがイマイチわからないでいる。だからゆっくり噛み締めるように何度も止まって考え考え読んでみている。支持されるわけがわからなくとも、この作品に流れる時代の匂いは以前から好きなのだ。

日帰り帰省。_a0025490_013182.jpg そして太平洋は見事な青だった。空の青みと海の青みが境界のところでくっきりと上下に分かれていた。こういう海を見るたびに帰ってきた感が全身に広がる。太平洋抜きには故郷を想えない。駅前の停留所で直射日光をよけながらバスを待つ。車窓からの風景は帰るたびに変化する。更地になっていたりマンションができていたり別な店になっていたり。ふだんは思い出さないようなことをいくつも思い出す。あそこは誰ちゃんち、こっちは確か先輩んち。ここでチョコレートを渡した、あの前で第二ボタンもらった・・・案外いろいろちゃんと色付きで憶えているものだ。

 帰ると弟は外出中で、父は派手な柄のハーフパンツをはいていて、4日間かけて庭の松をきれいにしたぞと言い、母は韓国ドラマのDVDを見ていた。近所の寿司屋からにぎり三人前が届いて、相変わらずここのお寿司はネタがでかすぎる、シャリが多すぎる、と言いながら近況報告し合う。誰それのところに子どもが生まれたとか誰それが再婚したとか、わたしの同級生の消息話だ。ああ、胸が痛い・・・。弟がまた肥えたとかで、父よりもすっかりおっさん体型なのだとか。結婚の予定はとんとないらしい。もててた20代のうちにしちゃえばよかったのにねえ。ああ、胸が痛い・・・。
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 母が見ていたドラマが突っ込みどころ満載で面白かった。この若社長はこっちの女あっちの女ととっかえひっかえで一体いつ仕事してんだ、会社潰れるぜー、こっちの子のほうが面白いからわたしなら結婚相手は彼女を選ぶけどなあと言ったら、「なんであんた先がわかるの!?そうなのよ、この社長この子選ぶのよ」と母。繰り返し何度も見ているんだそう。ところどころに含蓄のあるいい台詞が出てくるから好きなんだって。夕方帰宅した弟に車を出してもらって介護ホームに入居しているばあちゃんに逢いに行くことに。御年92歳のばあちゃんは腰が悪くて車椅子生活ではあるけれど、頭はしっかりしているし食欲もあって、「ばあちゃん、奈緒美だよ」と顔を出したら、間をおいた後、「なんだか随分感じが変わったんじゃないの」と言う。いくつの頃のわたしをイメージしてのコメントだろうか。ばあちゃん、わたしももう36歳だよ。

 帰省して感じたのは、父も母も年齢のわりに若いなあということだった。父は求めがあるといまだに中国に出張するし、母もよく歩くからフットワークが軽い。口には出さないけど「孫の顔見るまでは老いてなんていられんわい」と思っているのかもしれない。長男長女そろって不肖で、ほんと胸が痛むよなあ。(写真下:父のコレクション、少林寺の置き物)
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by naomu-cyo | 2010-10-12 00:03 | フォトダイアリー | Comments(0)