南部紫根染めの「草紫堂」へ
2011年 07月 10日
紫根染めのきものや帯は、今まできもの屋で何度か目にしたことがあった。奥行きのある実にいい色なのだ。いつか欲しいなと思ってはいたのだが、盛岡にその店があるとは知らなかった。わくわくしながら目印の南部煎餅の店の角を曲がる。すぐ見つかった、「南部紫染本舗 草紫堂」。
ショーウィンドーにかかる紫根染めや茜染めの反物がものすごくきれいで見とれる・・・。そこで止めときゃいいのに、引き戸を開けて「こんにちは」と声をかける。「どうぞー」と店員さんふたりが顔を上げる。
紫と茜色の洪水・・・。すんばらしく美しい、天然の色の世界。「万葉集」にも詠まれた紫草の根からとれる染料で染められた、古代から続く色彩。ロマンですなあ・・・。
お店の人が、お客さんの着姿写真をいろいろ引っぱり出して見せてくれた。ここで出逢ったのも何かの縁なんだろうか。行く先々できものの罠にはまるのも考えものなのだが、素直にはまってしまってもいいくらいの美しさ。もちろんいろいろな絞り模様の紫根染めや茜染めの反物があり、好みではない模様もある。が、そのうちの紫根染めの一本がどうにもこうにも気に入ってしまったのだ。あのきものにも合う、あっちのにも・・・と、手持ちのきものを思い浮かべ、目の前の帯と合わせてみる。けっこう合わせられるなあ。
そして同時に手作業の大変さにも目がいく。たくさんの人の手が加わってひとつの作品になる。量産できるような代物ではない。当然存在感が醸し出される作品になる。この鹿の子絞りができる職人さんは10人くらいしかいないんです、と店の女性。絶えて欲しくない、素晴らしい色、技。
茜さす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る 額田王
紫の 匂へる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我れ恋ひめやも 大海人皇子
古代に思いを馳せて・・・。残るは支払いばかりなり。さ、がんばろ・・・。