フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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南部紫根染めの「草紫堂」へ

 中津川沿いをぶらぶらしていたら素敵なギャラリーがあった。岩手県内で活動する陶芸家さんの作品がずらり、地元の食品があれこれ。器をあれこれ眺め、そういえば味噌がきれていたっけと岩手産を購入。店員さんから型染めの工房や、紫根染めを扱う店があることを聞く。型染め工房に行くには時間が足りないからと、すぐそばの紫根染めの店に行ってみることに。

南部紫根染めの「草紫堂」へ_a0025490_11157100.jpg 紫根染めのきものや帯は、今まできもの屋で何度か目にしたことがあった。奥行きのある実にいい色なのだ。いつか欲しいなと思ってはいたのだが、盛岡にその店があるとは知らなかった。わくわくしながら目印の南部煎餅の店の角を曲がる。すぐ見つかった、「南部紫染本舗 草紫堂」。

 ショーウィンドーにかかる紫根染めや茜染めの反物がものすごくきれいで見とれる・・・。そこで止めときゃいいのに、引き戸を開けて「こんにちは」と声をかける。「どうぞー」と店員さんふたりが顔を上げる。

 紫と茜色の洪水・・・。すんばらしく美しい、天然の色の世界。「万葉集」にも詠まれた紫草の根からとれる染料で染められた、古代から続く色彩。ロマンですなあ・・・。

 お店の人が、お客さんの着姿写真をいろいろ引っぱり出して見せてくれた。ここで出逢ったのも何かの縁なんだろうか。行く先々できものの罠にはまるのも考えものなのだが、素直にはまってしまってもいいくらいの美しさ。もちろんいろいろな絞り模様の紫根染めや茜染めの反物があり、好みではない模様もある。が、そのうちの紫根染めの一本がどうにもこうにも気に入ってしまったのだ。あのきものにも合う、あっちのにも・・・と、手持ちのきものを思い浮かべ、目の前の帯と合わせてみる。けっこう合わせられるなあ。

南部紫根染めの「草紫堂」へ_a0025490_111641.jpg
 こうなると、止まらないのは自分でよく分かっている。ええい、これも東北支援だ!・・・まんまと注文してしまった。もともと産地ものに弱い。琉球とか信州とか(持ってないけど)郡上とか、その土地で生み出される布や染めに弱い。土地のもつ風や匂いや色彩が織り込まれ染め上げられているのだと想像するだけで、身につけたくなる。大地のもつ力を身につけたいって気持ちの表れなのだろうか・・・。

 そして同時に手作業の大変さにも目がいく。たくさんの人の手が加わってひとつの作品になる。量産できるような代物ではない。当然存在感が醸し出される作品になる。この鹿の子絞りができる職人さんは10人くらいしかいないんです、と店の女性。絶えて欲しくない、素晴らしい色、技。

 茜さす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る    額田王
 紫の 匂へる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに 我れ恋ひめやも  大海人皇子

 古代に思いを馳せて・・・。残るは支払いばかりなり。さ、がんばろ・・・。
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by naomu-cyo | 2011-07-10 11:01 | お着物 | Comments(0)