新宮ときいて思い出すのは
2011年 09月 20日
先だっての被害報道で「新宮」の地名を目にしてすぐに思い出したのが、染織作家・荒木節子さんのこと。以前、某きもの雑誌の取材でお目にかかって以来、展示に二度ほど足を運んだろうか。前々回のわたしの個展にもいらしていただいた。
取材のとき新宮出身と伺って、「中上健次と同じですね」と話したら、なんと荒木さんは同級生だったそうで、当時の中上健次が作家になる前のエピソードをいくつか伺った。作風を彷彿とさせるようなお話だった。中上作品は数年前になんとはなしに「千年の愉楽」を手にし、最初は読みにくかったその文体も、物語にひきずりこまれるうちにまるで気にならなくなり、あっという間に読み終えた。それからいくつかの新宮が舞台の作品を読んだ。強烈に新宮に行きたくなったのだが、まだそこまでは足を延ばせてない。
去年の個展に伺ったときに、とても素敵な帯があった。おいそれと手を出せない価格だったので、同色同素材の鼻緒に落ち着いた。この鼻緒を付けた下駄は殊更お気に入りで、しかも合わせやすいからとても重宝している。新宮に土地勘もなければなじみもないけれど、知っている人の故郷であるというだけでたちまち見知らぬ土地ではなくなる。気になってハガキを出したら、ご実家は高台で難を逃れたとのこと。どうかこれ以上彼女の故郷がいたみませんように。