家に着くなり震度4の地震に迎えられる。すっかり慣れっこになってしまった家族は、揺れの中平気で甘栗の皮をむいていた。夜中にも震度3の地震に見舞われ飛び起きる。それでもすぐに眠りに戻り、久しぶりにたっぷり眠って迎えた実家での朝。見事な秋晴れだ。
朝食後、父とともに墓参りへ向かう。バイパスを通って国道6号に出、ひたすら道のりに歩く。空が大きくて視界の半分が青空になる。健脚な父はどんどん先を歩いていく。わたしは時折立ち止まっては写真を撮る。こんな見事な青空は久しぶりなのだ。
お寺には震災の被害がまだまだ残っていた。本堂の修理工事中で、奈良ナンバーの瓦屋の車が停まっていた。寺の裏手の丘にお墓が段々になってあるのだが、ところどころで墓石が倒れたりずれたりしている。武藤家の墓石は倒れなかったが、燈籠が倒れた。隣りのお墓では地蔵までもひっくり返って痛々しい有様。大地が大きく揺れたあの日、石の転がる重たい音が響き渡ったにちがいない。お供えの花の色があってよかった。殺伐とした光景をやわらげてくれる。
手を合わせ、祈る。家族と家が無事であったことのお礼を伝え、この先もどうぞ見守って下さいと。今回なんとしても墓参りに行かねばと思ったのは、ご先祖様に兎に角お礼を伝えたかったからだ。特に信心が強いわけではないが、いつの頃からか自然に「守られているんだなあ」と思うようになった。何かきっかけがあったというわけではないが、実感が湧いたのだろうと思う。