フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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遊びまくった黄金週間!〜浅草2days〜

 1日、浅草で「東京かわら版」の表紙巻頭の取材撮影。初めて浪曲協会に足を踏み入れる。昔あちこちにあった寄席ってこういう風情だったんだろうなあ・・・落語・講談・浪曲などの語り芸って、畳の上に座布団並べて、というスタイルがやっぱりとってもしっくりする。マイクを通さなくても声がうなりが響き渡る。外野の音など打ち消してしまうほどの声量と、節と呼ぶのだろうか、話のテンポの心地よさに圧倒された。

 浪曲はまだ数えるほどしか聴いたことがない。国本武春先生で初めて浪曲を聴き、面白いものだということがわかり、その後何度か聴く機会があって、そうして武春先生の御本で高座撮影するご縁をいただいた。楽しい撮影で、御本もあっという間に読み終えてしまうくらいに楽しかった。もっと聴いていきたいなと思っていた矢先の今回の取材でありがたい。

 その武春先生の出版記念の会のときにたまたま同席したSさんと、この日会場で再会。彼はおそらく40代半ばあたりだろう、勤めがあるため木馬亭の定席は土日しか行かれないけど、客席を占めている60代70代の人たちの年齢に自分がなったときに浪曲が廃れて聴けなくなってしまうのは哀しいから、なくならないようにせっせと通ってます、と熱く話されていたのが印象に残っている。高座のすぐそばで、座布団にあぐらをかいて全身で聴き入っているようにうなだれた姿勢だったのが、座席後方から撮影していて目に留まった。この日は毎週火曜日夜、浪曲協会での会が始まったちょうどその初日で、客席は思いのほか若い人が目立った。Sさんと想いを同じくする人もいるにちがいない。わたしも聴く機会を増やしていこう。

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 翌日、再び浅草へ。会津木綿のきものに黒地に鳥や花が織り込まれた紬帯を締めて。目的は浅草演芸ホールの上席夜の興行。例年通りゴールデンウィーク興行と銘打った豪華メンバーによる番組だ。浅草ついでに辻屋さんに行き、かかとがすり減った下駄二つといただきもので鼻緒がきつい草履の修理をお願いする。ひとつは台ごと替えてもらう。夏が近いし何か涼しげなものをと相談すると、「シコロの台がいい」と勧められそれに。たしかに涼しげだ。

 その後、浅草寺裏手のパン屋さん「粉花」へ。事前に電話を入れパンたちを取り置きしてもらってあった。そのままそこでお茶とおしゃべり。先客でいらした鞄デザイナーの藤田さんをご紹介いただく。何かを作ってそれをお客さんに提供する、という生業にまつわる心情などについて、4人でわいわい話す。好きで取り組んで生み出したものに相手がお金を払ってくれる、ということのありがたさ・・・ものそのものの良さよりも作り手自身が強すぎて、いつの間にかその店から足が遠のいてしまっていることがあるよね、なんて話もする。そもそも「こだわる」という言葉は本来いい意味で使われる言葉ではないわけで。ゆえに「こだわり」を連発されるとそれだけで気持ちが萎えてしまう。まあ、わたしがひねくれ者だからなせいでもあるけれど。

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 「粉花」を後にし、演芸ホールへ。楽しくてわくわくする。誰が取り立てて好きというのは最近ほとんどなく、寄席空間でからから笑っていられることが嬉しくてたまらない。高座に出てきて放つ雰囲気が噺家さんごとにまるで異なるのも興味深いし、客席のふわふわ感もいい。浅草のお客さんはとりわけよく笑う。

 トリは小三治師匠の「粗忽長屋」。場所が浅草なだけに、その辺ではっつぁんくまさんがうろうろしているような、自分も噺の中の住民かのような、そんな感じがしてくる。気のせいかもしれないけど、高座を終えた師匠の顔が実に嬉しげで、目がにこにこ笑っていた。
 
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by naomu-cyo | 2012-05-07 01:40 | 落語 | Comments(0)