こないだ、染織家の吉田美保子さんの工房にお邪魔してきた。お名前はイラストレイターの岡田知子さんからかねがね伺っており、ゴールデンウィークに一衣舎さんの展示会で初めて作品をじかに拝見、エッジが効いているにも関わらずなんともほんわかした作風が心に残った。ご本人もとても気さくな方で、また展示がある際には是非ともお知らせをして欲しいとお願いしてあった。
5月の下旬に北鎌倉で展示があるというので岡田さんと出かける。会場のビンハウスギャラリーは居心地のいい一軒家で、お茶をいただきおしゃべりしながらついつい長居。合間に何度も美保子さんの作品を見返す・・・。ゴールデンウィークの展示会で拝見したものと同じ流れの作品であるにも関わらず、何でこんなにわくわくするんだろうと心の中の分析を試みる。そうか、リズム感に惹かれているのか。先に見た作品が穏やかに一定のリズムを刻んでいるとたとえると、新作はぽんぽん跳ね回っている感じ。前作が「日常」だとしたら、新作は「非日常」というか。にぎやかな帯が好きなわたしにはたまらない魅力の宝庫だった。5月は暇だったけど、4月半ばまでは働き通しだったものなあ・・・そうそう確定申告をまだしてないからこれを済ませれば還付金があるじゃない!・・・こういうことを考え出したら終わりなのだ、もう手込めにする気満々になっているのだ。
そんなわけで、工房見学をしてみたかったということもあり、作品を受け取りに伺ったのだった。そして数時間にわたって染織のことや着物の話を延々とし続けた。染織には化学と算数の脳みそが必要で、でもデザインのセンスも問われるわけで、右脳力と左脳力と根気が必要な緻密な世界であった!瞬発力で仕事をしているわたしには、頭で理解できても体現や実感するにはとても遠いかなたの世界。だから一生懸命瞬発力で働いて、銭をこさえてその完成された世界を手中にするしか手はないのだ・・・。
それにしても、整然とした工房だった。「家と仕事場が一緒だから」と美保子さんはおっしゃるけど、空間の使い方も置いてあるものも何もかもすっきりとした美しさがあった。心地よさが、風通しの良さが、すみずみまでいき渡っている。それは美保子さんご自身の表れであると同時に、作品にもまた表れていると感じて帰ってきた。今度は作業中をのぞいてみたい。どんなリズムで染めて織っているのだろう。きっと心地いい響きにちがいない。