書籍のお仕事
2012年 07月 24日
スタジオの最終面接で当時の社長から「どんな仕事をしたいか」と問われた。映画のスチールを撮りたい、フォトエッセイに興味がある(アラーキーの「東京日和」の影響をもろに受けていた)、そして本に関わる仕事をしたい、と答えた。写真界の現状を熟知している彼からは、「それじゃ食えないよ」などと言われたのだが、まあどうにかこうにかカメラマンの仲間入りをし、今にいたっている。
出版社をいくつか受けたし、学習参考書を出す出版社で原稿書きのバイトもしていたから、書籍にはもともと思い入れがある。写真に興味をもつよりも早く、本と懇ろだった。最近、撮影で関わった書籍が発売になった。初のビジネス本でのビジュアル撮影で、「がんばる人ほど見落としている『気づかい』の極意」(美崎栄一郎、フォレスト出版)。表紙、中面の写真も全て撮影させていただいた。
ビジネス本で一体どんな写真を中面に使うんだろうと打ち合わせに行ってみたら、ビジネスシーンのあれこれを撮るというもので、見開きや片面いっぱいに写真を使うことに。大きく使っていただくのはとても嬉しい。説明的なビジュアルではなく、空気感を重視したものが欲しいとのことだった。
撮影当日、出版社の営業マンたちをモデルにしてシーンの再現に努める。こういう撮影をわたしは勝手に「小芝居系撮影」と読んで毎回楽しくやらせていただいているのだが、今回もまた楽しくて、「ハイ、そこで上司を笑顔で見つめて」とか「ちょっと緊張感をにじませてみましょう」などなど演出もどきなことをする。これこれこういう心持ちで、と伝えると、ファインダーの中の絵がびっくりするくらい変化して生き生きしてくるからたまらない。
瞬間を封じ込めると動きが失われるわけだが、死んだ写真にしたくないといつも思う。今まさに打ち合わせが繰り広げられているかのような錯覚を読む側に届けたいし、撮影したビジネスシーンにリアリティーを持たせたい。二次元なんだけど三次元を匂わせたい。そういうことを意識しながら撮らせていただいた。もちろん、ノリノリで協力していただいた社員さんたちの見事な役者ぶりあってこそだ。