フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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5年ぶりの「空想文学旅」〜発端〜

 お盆が明けたと思ったらばたばたのスケジュールで、やるべきことをなんとか済ませ新宿から高速バスに乗ったら、きれいさっぱり仕事のことが頭から離れた。

 今回の旅のお供は中上健次の「千年の愉楽」と「奇蹟」。中上作品を初めて読んだときから新宮に行ってみたいと思っていた。

 作品に描かれる新宮の「路地」には夏芙蓉の香りが漂い金色の鳥が訪れる。血なまぐさい出来事が頻発するにも関わらず、「別天地」という言葉を思い浮かべてしまうほど甘やかな空気が感じられる。人ではないものの存在が路地をおおい見つめているような心地さえする。その路地は今はないけれど、その残り香と中上文学が生まれ育った風土を感じてみたかった。

 今回ほど縁の不思議さに感じ入ったことはないかもしれない。仕事で一緒になったUさんがやっているカフェにこまめに行くようになった4月頃、「百年の愚行」という本のタイトルがきっかけで「千年の愉楽」の話になり、彼女の店の常連である洋菓子店のオーナーパティシエが新宮出身だと教えてもらった。後日パティシェのSさんとお店で遭遇し、わたしが長々お世話になっている装丁デザイナー氏や書籍編集氏と友人であることが判明。そんな縁に感激していたら、やはりその頃知り合った陶芸家のTさんのお父上も新宮出身で、パティシエのSさんの友人であることが判明。何重にも縁が繋がったのだった。

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 これはもう、文学旅に行くしかないでしょう、新宮に行くタイミングでしょう。スケジュール調整をし、猫を実家に預け、久しぶりにフィルムを買い込み、パティシエSさんのアドバイスで宿をとり、お手製地図をポケットにしのばせ、新宮へ向かった。Sさんの肝煎りで現地でなにくれとなく面倒を見てくださったのが陶芸家Tさんのお父上。中上健次が、新宮が、呼び寄せた縁は濃くて力強くって鮮やかで、5年前の文学旅とは全く違うものになった。また、5年前とはわたし自身の境遇も変わっていた。中上作品というフィルターをかけて訪れた三日間にわたる「空想文学旅」。三日間では終われない文学旅になった。

(写真は宿の窓から見えた朝の神倉山。ここで毎年2月6日、御燈祭が開かれる)
Commented by team-osubachi2 at 2012-08-28 23:22
うん、やっぱり「時期の到来」なんだね!
御燈祭、テレビで見ました。太古のエネルギーの感じがきっと残ってるんだろうなって印象受けました。紀伊半島も(日本各地の半島もそれぞれに)なんか独特の習俗ありますね。ルポ、楽しみにしています〜。
Commented by naomu-cyo at 2012-08-31 03:00
team-osubachi2さん、満喫してきましたー!なんか身も心もすっきりというか(笑)。きもの欲しい病もひとまず沈静化・・・物欲落として参りました、あはは・・・
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by naomu-cyo | 2012-08-28 08:49 | | Comments(2)