フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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「うじうじ」now on sale!

 梅雨入りしたこの時期にあまりにも寄り添いすぎるタイトルの「うじうじ」(PHP研究所)が発売になった。著書は噺家の立川志ら乃さん。帯と中ページに撮影した高座写真を使用していただいた。ありがとうございます!

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 企画から5年で出版にたどりついたんだそうで、志ら乃さんの独演会を撮り出したのが2008年だから、同じ頃に企画も芽吹いたことになる。独演会の楽屋横で担当編集T氏とはよく顔を合わせており、本ができる暁には写真をよろしくお願いします、と声をかけていただいていた。

 先日、志ら乃さんから宣材写真を撮って欲しいとの依頼をいただき、事務所で撮影した。撮りながら四方山話が止まらないし、話しながらのほうがいい表情が出てくる。ここ1,2年くらいとても疲れているように見えることが多かったのでそう伝えると、昇進後の3月の披露目の会ではっとした、今まさに気力があふれている、という。話をきいていると、志ら乃さんが先輩にかわいがられ後輩には慕われる姿が容易に想像できる。愛嬌があるし、コミュニケーション能力も高いし、なにしろ機転がきく。そしてしっかりと空気を読める観察眼もある。そういうキャラクターが高座にももっとふんだんに生かされていったら強いんじゃないかしら、と思う。

 志ら乃さんが真打ちを目指している途上で、撮りながら感じたことがある。師匠から評価されることが絶対、と思っているかのように見えた時期があった。精神的な拠り所や指標はたしかに師匠かもしれない。でも、あなたの芸を受け止め支えてゆくのはお客さんなのだから、もっとお客のほうに心を傾けてもいいのでは、とらわれていませんか・・・そんなふうに感じたことが何度かあった。ところが今回、真打ち昇進を果たされて半年がたち、撮りながら話していて、なんていうか風穴が空いたような風通しの良さを感じた。

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 先が長い噺家という商売、その長い途上でどんなふうに心模様が変化していくかなど、わたしには想像もつかない。途轍もない孤独感や虚無感に襲われることだってあるだろう。そのたびに高座での表現も変わっていくにちがいない。どんな状況であれ聴き手としてついてゆこうと思うのは、座布団の上の人がこれからどのような軌跡を描いてゆくのかが気になるからで、ひっくり返せば、気になるくらいの魅力が備わっているのを見い出しうるからだ。撮り手として聴き手として、わたしは今後も関わってゆくつもりでいるので、きっとこれからも様々な状況下の高座に接することになると思う。伸びゆくときもあれば停滞するときもあるだろう。いつか、志ら乃さん的至高の高座に接することができたらいい。とことんまで高座を楽しみ尽くしている姿を見たいし撮りたいって思う。

 (写真下、著者近影。実にすがすがしい笑顔。)
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by naomu-cyo | 2013-06-11 10:15 | 落語 | Comments(0)