フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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老猫、近況。

 猫の老いにまざまざと直面してから3ヶ月が過ぎた。対社会生活におけるこの3ヶ月は実に矢の如しな速さで過ぎ去ったけれども、対猫との3ヶ月はしんどいことが度々あったしまだその渦中であるにせよ、濃密でゆっくりとした時間であったと思う。老猫ぱちと過ごす時間はおそらくそう長いこと残ってはいまい。この3ヶ月で食が細るとともに身体も細っていき、今ではちんまりとした子猫のようなサイズになってしまった。持ち上げると軽いし、膝に長いことのせていても脚が痺れてこない。これはとても哀しい体感だ。立ち上がるのにも難儀してよろよろと歩く姿は切なくてたまらない。そんな身体でもトイレで用を足すことを自らに課す猫に、日々拍手を送っている。

 食のえり好みが激しく、5種類のご飯を並べても見向きもされないなんて日もあった。何をあげたらいいかわからず、遅い時間でも開いているスーパーに走っていき、割引になった刺身をすがるような気持ちで買ったこともしばしばある。泣き落としに出てみたがやはり頑として食べてくれないこともあった。今週水曜日、撮影が終わって帰宅し、仕事の打ち上げに出かける前に猫の飯の算段をしたものの食べてくれず、加えて呼吸が浅く、これはいよいよかと思い、打ち上げを急遽キャンセルして猫を抱いてだーだー泣きながら思い出を語ってきかせた。このまま空腹で逝かせるのは偲びないと、ダメもとで「黒缶」を口元にもっていったところ、いきなり食いついた。その姿を見て涙が嬉し泣きに変わった。

老猫、近況。_a0025490_1135180.jpg
 以前より食を求めなくなっただけで、空腹を憶えれば気に沿うものは少量なれどどうやら食べるらしい。そう気付いてからはあれやこれや並べることはやめた。右往左往する我が身を振り返ってみて、自分にはいきものが老いるということへの免疫がないだけではなかろうかと考えるようになった。ヒトの4倍のペースで年をとる猫にしてみたら、この3ヶ月は1年にあたるわけで、老いのペースが早いように思ってショックを受けていたけれど、もともと持ち合わせている時間の長さが違うのだ。

 冬が近付くと昼を挟んだ時間帯に日のあたる場所がある。そこに座蒲団を置き、その上にぱちを寝かせ、そっと膝掛けをかけてやると、ぬくいのかうとうとし始める。その顔つきは安らかであり毅然ともしていて、「そうばたばたしなさんな、これが老いるということですぞ、慣れよ」と言われているような気がした。そんな姿を今日の昼間に眺めていたら不意に個人名が浮かんだ・・・「寂聴」!

 そんなわけで我が家の老猫ぱちは寂聴と化し、老いながらにして生きるということを身を以て教えてくれているようだ、どうやら、おそらく、きっと。
Commented at 2015-10-26 12:32 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by team-osubachi2 at 2015-10-27 10:39 x
昨日チヨちゃんちのテスとひと月ぶりに再開しました。
こちらもさらに加齢な様子でした。ことに筋力がね。
好きらしいきなこまぶしのソフトせんべいをうっかり指であげたら、抑制がきかなくなったところへ甲斐犬のあごだもんだからガツッと歯が当たった瞬間に指が反応して、さいわい爪先を噛まれただけで済みましたが、食への欲は健在でした。
実家で老犬も二三匹看てましたが、何度経験しても個々違う症状が出るので右往左往していました。思うにどんな老化もみ〜んな初体験なのですよねえ、本人にも他にも。
Commented by みかん at 2015-10-27 10:57 x
ガンバレ! 我が家の老猫の時はハチミツをお湯で溶かしてなめさせたり、ヤクルトを舐めさせたりしていました。スープタイプの猫ごはんもありとあらゆる種類を開けては試していた事を思い出します。
Commented by naomu-cyo at 2015-10-28 07:26
ABBY&路子さん・・・いつも励ましの言葉をありがとうございます。そうなんです、わたしも長生きしてねと今の状態になる前からずっと語りかけてきました。そして相棒の老いを毅然と受け止めるのはほんとに難しい。穏やかに眠っているのかもう最期のときなのかわからないくらい呼吸が静かなとき、動揺して涙しか出てきません。ひょっこり起き上がってきょろきょろするのを見て「あーよかった、まだ一緒にいられる」と安堵するような毎日です。父は「仕方ないことだ。奈緒美はよくやっている」と電話で言うんですが、わたしがあれこれ算段するのは、やるだけやったという気持ちにいたりたいからではなく、単に長く一緒にいたいからであって。夏はなんとか越せたから今度は冬を越したい。一緒にこたつにつかりたい。過去の四季折々のぱちが思い出される毎日です。応援、感謝してます。
Commented by naomu-cyo at 2015-10-28 07:30
team-osubachiさん・・・千代さんこないだ、テスは食欲はあるのにどんどん痩せていくのよ、それが不思議だしやりきれないよね、と話してました。ぱちは食欲がぐんと落ちており、そしてトイレ(大)のほうがうまくいかなくなりました。踏ん張っている最中に脚が踏ん張れず尻餅ついちゃうんです。しっぽにうんこつけてそれでも嘆いているふうでもなく、こっちが泣くながらしっぽをふいてやるような塩梅で。ぱちにとって初体験の老い、わたしにとっても初めて直面する老いの姿、いきもののすごさと長生きの切なさを同時に感じます。
Commented by naomu-cyo at 2015-10-28 07:32
みかんさん・・・ぱちが頑固で、匂いをかいで興味がないと頑として口を開けてくれません・・・スープ系、軒並みだめでした。はちみつをお湯でとかしたのも無視(苦笑)。思いつくかぎりのことをやっているんですが、なかなかはまりませんね。一度食べなくなったものを久しぶりに出したら食べてくれるなんてこともあるので、我慢強く繰り返すようにしています。
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by naomu-cyo | 2015-10-25 01:14 | | Comments(6)