フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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あったかい

 逢う人逢う人が、それぞれの言葉でそれぞれの想いでそれぞれの形で、ぱちを亡くしたわたしをいたわってくれる。同じ経験をしたことがある人は思い出して一緒になって涙ぐんだりしてくれる。みんな、あったかい。

 今日打ち合わせに行った先では「武藤さん、お身内を亡くされたんですって」といたわってもらった。撮影終えて夜に逢ったWさんは「残念だったね」と言い、帰り際に「パンってもらうと嬉しくない?」とパンをごっそり差し入れてくれた。

 いたわってくれる人たちにぱちのこの夏以降の様子をかいつまんで伝え、最期の姿がせつなかったこと、でも瞳がきれいだったことを添える。渋谷の雑踏を待ち合わせ場所めざして歩いていたら突然、遠吠えのような鳴き声を放つぱちをひょいっと抱き上げて「どうしたのー?何鳴いてんのー?」と言って顔をすり寄せたときのことが思い出されて、目が潤んだりもしたけれど、おいおいと号泣することもなく一日が終わろうとしている。ああ、こうして少しずつ不在の実感を受け入れてゆくのだろうなと思う。

 今は猛烈に仕事していたい。来年の写真展の準備もいい加減始めなきゃだし、やることは満載だ。たとえ泣きながらであっても前に進んでいきたい、進んでいかねば。

あったかい_a0025490_344028.jpg
 今回のことで、両親にはたくさんの心配をかけたろうと思う。今朝も父から電話があった。10日の母の誕生日に毎年入れている電話をすっかり失念していたら、「奈緒美から電話がない、大丈夫なのかしら、ってお母さんが言ってる」と父。申し訳ない。毎年なんらかのアクションをしている両親の結婚記念日もスルーしてしまったにも関わらず、香典までもらった。香典返しを兼ねて何か贈りたい。そのうちいつかと思っていた両親を旅行に連れて行く計画、来春にでも叶えたい。倉敷、とふと思い、それを伝えると、「日光とか鎌倉あたりがいい」と母。2泊3日くらいの旅をしっかりサポートしてみせたいな、両親の足腰がしっかりしているうちに。そしてたくさんたくさん写真を撮っておきたい。ぱちを亡くしたことに気をとられっぱなしで両親を気遣うことを忘れてしまっていたらこれだってゆくゆく後悔の種になるだろう。悲しむことも親孝行も仕事も写真展の準備も友人に逢うことも落語を聴いて笑うことも、全部同時進行。

 日付変わっての帰り道、夜空が明るかった。雲の輪郭がくっきり見えるくらいに明るかった。わたしが歩いていた住宅街からはお月さん見えなかったけれど、きっと月が出ていたのだろう。黄泉路も明るく照らしておくれ。
Commented at 2015-11-14 17:38 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by naomu-cyo at 2015-11-15 01:50
路子さん&ABBYちゃん・・・ほんとにいつも変わらずに励ましをありがとうございます。路子さんのコメント読んでありがたくって涙に暮れます、毎度、ほんとに。
わたしのこの日記が路子さんに元気を注入していたんだとしたら、そのわたしの日々の活動を家で支えてくれたのはぱちです。長く一緒に暮らした人とお別れをしたとき、ぱちとの人生二人旅をなんとしても協力し合って楽しく明るく過ごしてゆくぞ、と奮い立てたのもぱちの存在ゆえでした。
今日は殊更に寒くて、ああなんでぱちはいないんだろう、こんなときはわたしをあっためて欲しいのに、と思いました。ぱちが大好きだったこたつ、四十九日が過ぎるまでは出すのをやめようと思って。わたしだけぬくぬくしちゃ申し訳ない気がして。毎日、ぱちに逢いたいなああのむくむくぼてぼてのおなかをなでたいなあって思います。毎日家に帰るときが一日の中でいちばんしんどい。でもそれにもいずれ慣れて平気になっちゃうんだとしたら、それもなんだかさみしいことですよね。
ぱちはわたしの15年の毎日に虹を架けてくれた存在でした。もうあんなヤツには出逢えないんだろうと思います。
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by naomu-cyo | 2015-11-13 03:04 | フォトダイアリー | Comments(2)