フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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「毎日っていいな」〜吉本ばななの連載を読む〜

 毎日新聞日曜版に吉本ばななさんが「毎日っていいな」というエッセイを連載している。最近の彼女の小説はとんとご無沙汰だけれど、以前に読んだことのある小説のたたずまいと比べるとこのエッセイは筆致がユーモラスで、小説では感じたことのない彼女の新たな側面が見られてなかなかに面白い。

 ちょっと前の「せちがらい世界」と題されたエッセイはやたら納得するところがあって切り抜いてあった。

 ざっと事のあらましを抜き書きするとこうだ。電車で目的地に着くまでに「チッ」と聞こえよがしに舌打ちする人に四回会った。「すごいことになっちゃってるな」と思った。「その人たちだって家に帰れば好きな音楽を聴いたり、ドラマを観たり、家族に会ったりして、『チッ』と舌打ちをしない人生を送っている一面もあるにちがいない」「それとこれを分けて生きられると思っているのがなによりすごい。そんなはずはないだろう」・・・「そんなはずはない」、ほんとにその通りだなあと思う。

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 けっこう混んでいる早朝の電車で、隣りのおっさんがとても強い悪意を感じる肘鉄をわたしの腕に喰らわせ続けていたことがあった。こっちだって寄りたくて寄っているわけではなく、押されて止むをえずそのおっさんに寄ってしまったわけなのだが、わたしのみならずそのおっさんは自分に寄るものに対してそのような硬化した表情と態度を露骨にアピールしていた。カッチーンときたわたしは負けてたまるかと一歩もひるまずそのまま受けて立った。すごいムッとした舌打ちをこっちに向けてしてきたけれど、無視した。大体ね、いい年した図体のデカイおっさんが、チビの婦女子に向かってその態度は社会人としてどうなのよ、満員電車なんだからお互いさまでしょうよ、と内心腹立ちでいっぱいだった。その態度は人づきあいの中で端々に出ているはずだよ。隠しててもわかっちゃうもんだよ。ばななさん言うところの「それとこれを分けて生きられると思って」いるかもしれないけれど「そんなはずはない」とわたしも思う。顔や物腰が物語るのだ。

 高島屋の紙袋をいくつも持って高そうな身なりをしたおばさんふたりと電車で遭遇したことがある。目つきがなんだか意地悪そうで、口の形はそろってへの字の形。ああ、これはきっとふだん不平不満ばっかり言っている人だなあと思った。聞くともなしに聞こえてくる会話は全然楽しげではなかった。で、こういう人に遭遇すると、自分は気をつけようって思う。たとえ自分が絶不調のときでも、への字の形になったらおしまいだって思う。

 今日、仕事で訪れた目白駅そばの横断歩道で、知り合いの舞台女優さんに声をかけられた。少なくとも声をかけられる程度にはかけやすい顔して歩いていたということだろう。まあ、わたしが抱く不平不満なんてのはつまるところまわりまわって自分への不平不満に行き着くことがほとんどなので、そんなわたしは不平不満面で歩く資格などないのだ。自戒を込めて。それにしても、かわいい彼女に声かけてもらって嬉しかったな。
 
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by naomu-cyo | 2016-06-29 02:35 | 読書 | Comments(0)