フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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「日本人はどう住まうべきか?」(養老孟司/隈研吾 新潮文庫)を読む。

 出先で手持ちの本を読み切ってしまい近場の本屋に飛び込んだものの、昼は寄席へ夜は観劇へと出かけた後の財布はかなり心もとなく、選択肢を絞って文庫本限定で面白そうな本を探したところ、目についたのが「日本人はどう住まうべきか?」(養老孟司/隈研吾 新潮文庫)という対談本。12月に訪れた富山で隈研吾さんの建築物に遭遇し、建築に疎いわたしでもその面白さを感じ取ることができたので、じゃあ隈研吾という人は住まいに対してどういう思想をもっているのだろうと興味をもった・・・ゆえのチョイス。

 養老さんの取り繕わないストレートな物言いに、隈さんも自由に時にはラディカルに考えを述べているのがとても面白い。震災後のやりとりなので、被災した東北のこれからの街づくりに関しても大いに意見を述べていて、当時こんな未来形が語られていたのか、しかしふたりが願ったようにはおそらく進んでないのではないか、と思った。

 自分が家を建てるあるいは買う可能性はおそらくなさそうだけれど、そもそも地べたにより近い生活を望んでいるので、眺めのいい高層マンションの上階に住みたいなどという願望をもったことはこれまでにない。常に住まいはせいぜい二階止まりで、ここ20年一階に暮らしている。地べたに足をついている感覚が自分にはけっこう重要だし、何かあったときに飛び降りても命に別状がなさそうなのも大事なところで、実家が二階建ての持ち家なことも影響しているのだろう。部屋は和室なので、日々目線の低い生活をしている。思えば実家も然り。リビングに椅子やソファーがあったことはなく、ずっと畳に座蒲団の生活。正座あるいはあぐら生活において、のっぽな家具には威圧感を覚える。実家よりもいっそう高さのない家具類しかないのが我が家で、なんにつけ低いということに安堵感を憶える性質なのかもしれない。ついでに言えば背も低いし。

「日本人はどう住まうべきか?」(養老孟司/隈研吾 新潮文庫)を読む。_a0025490_03432585.jpg
 「都市に住むなら賃貸が合理的」だと考える隈さんは、「企業にとっておいしい分譲の背景は知っておくべき」だと、分譲の仕組みをあきらかにしており、それを読むと、火事にも地震にも弱い木造二階建てのしかも古いアパートだけど、住まいとしてけっこういい線いっているんじゃないかなという気がしてくる。夏は暑いし冬は寒いけれど、それは至極当たり前の自然の摂理で、じゃあ暑さ寒さをしのぐにはどうすればいいかで工夫をこらすようになる。結果、そこそこ快適だ。もろもろの身体感覚がちゃんと機能しているようにも思う。身体のどこを温めておけば寒さを感じなくて済むかもわかるようになるし、体調も安定している。

 おふたりの話は住まいを越えて広がっていく。「建築教育で一番大事なのは、向かない人に早くあきらめてもらうことだ、という意見の人もいます」と隈さんがおっしゃると、「医学の世界も同じですよ」と解剖学者の養老先生が応じる。権威などくそくらえ的なスタンスのおふたりのやりとりが面白くないわけがない。建築と医療の共通点が多いのもまた、興味深い。

 この本を読み終えた翌日、養老先生が対談相手になる撮影の発注をいただいた。まだ先のことだけど、今からすっかり楽しみになっている。

Commented by team-osubachi2 at 2017-02-23 09:29
お二人の対談、そばで聞いてる編集者さんにも面白かっただろうなあと想像します。Eテレなんかでももっとそんな対談放送してほしいな。
私はこの数年、得意の妄想力を活かして『妄想・終の住処』を頭の中で建てて愉しんでいます。もうこれが面白くて面白くて、間取り図だけで何回設計し直してる事か。
土地の広さ、環境、予算がまったく無制限なので、日当りのいい緩い傾斜のある土地になんと平屋建て!・・・あ、いや、相方用に半地下にたっぷり収納の図書室付きです。にもかかわらず、どうしてかあんまり大きな家にならないという貧乏性。笑
さらに私の趣味で母家につながる茶室も付いてて、もちろんちいさな茶庭のような坪庭もあり、先生は月に二回お招きして茶道教室をうちで開いていただくのです。
あ、そうそう、お手伝いさんにはなんとかの有名な猫村さん!はさすがに無理なので、猫村さんの姪っ子(?)あたりの猫さんに住み込みで働いてもらってます。その女中部屋を妄想するのもまた面白くて。笑
玄関の棚には額入りの日本画とか伝統工芸展で見て気に入った陶芸品なんかもドーンと置けるスペースもこさえてみたり・・・おかげで美術展や工芸展に行っても、どれをリビングに置こうか、どの絵画を持ち帰ろうか、そんな目論見で品定め。
もちろんアトリエの横には着物部屋もあるのですよ。でもなぜか箪笥は二竿どまり。それ以上バンバン着る妄想が働かないのは、、、やっぱり貧乏性かもです。笑
Commented by naomu-cyo at 2017-02-28 02:06
team-osubachi2さん・・・そうですねー、わたしも平屋希望!居間と寝室と台所、お風呂にトイレがあれば十分。小さな庭に近所の猫が遊びに来る・・・手を伸ばせば必要なものに手が届くくらいのささやかさでいいから欲しい、平屋!
順調に(苦笑)きものが増えており、もう箪笥には入りませんー。減らしようもないので、うまいこと収納を作らねば・・・
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by naomu-cyo | 2017-02-23 03:44 | 読書 | Comments(2)