フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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欧州落語ツアー〜ケンブリッジ公演編〜

 11月20日。どういうわけかほとんど眠れなかった。しかし朝ご飯はもりもり食べるのだ。やはりパンとフルーツが美味しい。朝食会場から見える庭の芝生に大きなリスがいた。隣りの席の喬太郎師匠に「リスがいます!」と言ったら、師匠は携帯を取り出してガラス越しにリスの撮影を試みていらした。ふだんの高座姿からは思いもよらないシーンを拝見できて、なんとはなしにこそばゆく嬉しい旅の朝である。

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 この日は午前中が空き時間で、前もって予定を組むのはやめになり、わたしはクララとともに街中に買い物に出かけた。アイスランド行きを控え、防寒具を補填するためだ。セーターの一枚も買っておかないと、寒さをしのげそうもない。高座撮影もすることだし、おしゃれよりも無難なものをということで、ネイビーのシンプルなセーターを選んだ。ほかに実家への土産ものや化粧品を物色。リキッドファンデーションと眉用のペンシルをとりあえず購入。顔色を良く見せるのにチークもと探したものの、ローズ系ばかり。わたしの肌の色にローズ系をのせてもぱっとしないのは以前経験済みなので、潔く諦めた。もとより、すっぴんでいることになんの抵抗もないので、ないならないで無理に間に合わせることもなかろう。

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 昼前にホテルに戻る。正太郎さんは師匠の部屋で以前稽古をつけてもらっていた「寝床」を上げてもらっていたのだそう。「師匠のベッドに正座して、師匠が絨毯の上に座って、『寝床』をみてもらいましたよ」とのこと。「寝床」の上げを「寝床」でおこなった、なんてしゃれが効いている。ケンブリッジ仕込みの「寝床」だなんて、なんとレアなことだろう!きける日が楽しみだ。そのままロビーで師匠も合流し、船に乗りに出かけた。

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 ほかの船の船頭さんは雄々しい殿方なのだが、我々の船頭さんはなんとも女性的な感じのする方で、これまたネタのほうからやってくるといった感じ。船頭さんによる道中の解説をクララが同時通訳し、わたしは師匠と正太郎さんに向かい合う形で座り、撮影を試みる。おふたりの間、後方に立って船を漕ぐ船頭さん。この三角形な配置がなんとも楽しい。船に積んである傘を引っぱり出し、師匠が「船徳」を実践してくださった。どこまでも落語的。45分くらい乗っていただろうか。見上げるとおふたりの間にはきらきらした表情の船頭さんが見える。この男性と女性のあわいをゆくような雰囲気の船頭さんがとてもかわいらしく見えてきたあたりで船乗り終了。中国人の観光客と同船していたのだが、彼らは身内と話すときは中国語、ガイドさんと話すときは英語、と器用に使い分けていた。驚いていたらクララが「中国は英語を話せないと上にいけない社会なんだと思うよ」とひとこと。そして今回訪れたデンマークもアイルランドも母国語があるにも関わらず英語を使うのは当たり前という空気だった。我が身の語学力の乏しさを思う。東アジアの他国を下に見る人たちが日本にはいまだにいるけれど、彼らのほうがずっと進んでいるし優秀にちがいないと実感した。

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 夕方、落語会会場になっているケンブリッジ大学の校舎に移動し、高座設営。スムーズにセッティングができ、「うん、立派に学校寄席の高座だよ」ということで安堵。そして開場すると次から次へと人が集まってくる。在住邦人の方もちらほら。隣りの楽屋で師匠と正太郎さんは日本へ送るはがきをしたため、現地窓口のモレッティ先生が美しい所作で日本茶をいれてくださった。このイタリア人の先生もとても美しい日本語を話す。その生徒であるきのうの女子大生さんたちがきれいな日本語を操るのも合点がいった。

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 公演を撮影しながらお客さんのリアクションをきいていると、もしかしてここにいる学生さんたちは背景の字幕を読んでではなく日本語できいて理解しているのでは・・・と思う節がたびたびあった。それくらい反応が自然で、日本で落語をきいているのとかわりないように思えた。さすがケンブリッジ!心なしか師匠もこれまで以上にのっているように感じた。きのうの女子大生たちも目をきらきらさせて笑っていて、モレッティ先生も大ウケしていて、それはそれは幸せな光景だった。すごいすごいと感じてきたけど、すごいが倍加していく心地。睡眠不足がたたって足元がふらふらだったけれど、客席の熱量はびしびし伝わってきた。

 会がはねて、皆さんと大きなテーブルを囲んで食事。眠たさで意識が遠のきそうになりながらもしっかり食べる。ふつうに日本語が飛び交って、なんだか外国にいる気がしないほど。日本人のわたしでも存じ上げてない作家の研究をしている先生がいらして、驚くやら頭が下がるやら・・・。よその国の文化にそういうレベルで関心をもったり愛したりしたことが自分にはなかったなあと振り返る。いやはや・・・面目もないことで。




第2回プラチナブロガーコンテスト



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by naomu-cyo | 2018-01-07 01:19 | | Comments(0)