先だって季刊誌の読み物ページの取材で、この夏公開される
映画「海辺の生と死」の主演女優・満島ひかりさんにお逢いした。
テレビを滅多に見ない生活なので、満島ひかりさんの出演作品は
映画「悪人」くらいしか観ていないと思う。しまいには主人公に殺されるいけすかない女子大生を演じているのだが、これがあまりに見事ないけすかなさぶりで、強烈な印象が残った。どんな役にもなりかわれる力量ある女優さんだと感じていたので、俄然「海辺の生と死」への期待が高まる。愛しい特攻隊長がそのときを迎えたら自分も死を選ぼうという決意を胸に終戦前夜を迎える、激しい情熱を宿した女性。公開が待ち遠しい。
撮影の折には、去年八月踊りの取材で奄美を訪れたことをお伝えして、やりとりの糸口にした。短時間ではあったけれど、わたし自身が見たい絵が撮れたように思う。白い壁の前に立っていただき、窓に掛かっているカーテンを手にして動いていただいた。強烈な存在感と安定感のある方だった。表情がくるくる変化するのがまた魅力的な方でもあった。
たまたまなんだろうけれど、自分がオンタイムで関心を寄せていた対象が、それに繋がるものを呼び寄せたみたいな今回の案件だった。こんなふうに、一冊の本が次に読む本を見いだし、またそれを読むと次が決まり・・・という具合に、どんどん紐付けされていく読書は自分にとってはとても幸せな読書と言える。「狂うひと」を読み終え、「海辺の生と死」を読み終え、今は「狂うひと」の中で引用されていた
「妣の国への旅 私の履歴書」(谷川健一・日本経済新聞出版社)を読んでいる。島尾ミホが奄美出身者として描いているのに対し、民俗学者である谷川氏は訪れる側の目線で奄美をとらえる。まだ読みかけだけれど、とても面白い。この本が次はどんな本を招くだろう。活字にいざなわれて、読書旅は続く。