素敵な布を見つけると「これ、帯にできないかな」と無意識に考えているなんてことがけっこうある。
2年前だったかの
正藍型染め師・田中昭夫氏の展示販売会を訪れたときも、最終日の夕方で帯地が残り少なかったせいもあるけれど、壁にかかっているタイの手引き木綿のタペストリーがやたら気になって、じぃーっと見つめながら、この布で帯を仕立てたらの図を想像していた。よし、これはきっと面白い帯になる!と確信し意を決してその布を買い求め、早々に悉皆屋いちまつに持ち込んで帯に仕立ててもらった。思った以上に動きのある楽しい帯になって、至極ご満悦。現在発売中の
「七緒」の特集「『ひとえ』の正解」にもこそっと登場している。
去年春、
手仕事フォーラムのスタディツアーで山内武志氏の型染め製品が販売されている
アトリエぬいやを訪れた。山内さんの型染めは、すっきりシンプルな柄ゆきの中に師匠である芹沢銈介作品にも通ずるほのぼのとした雰囲気があって、お人柄がそのまま作品に反映されているかのようだった。あまたある製品の中から気になって手に取ったのは大判のテーブルクロス。我が家にクロスを敷くようなテーブルはない。手に取った瞬間からもう、脳内ではこの生地が帯になるところをめいいっぱい想像していた。これも買い求めて即いちまつに持ち込んだ。
出来上がったと連絡があり、楽しみでうはうはしながら受け取りに行くと、わたしが脳内で想像したのをはるかに凌ぐ面白い柄出しになっていて、仕立て屋さんのセンスを存分に感じた。わたしが事細かに柄の出し方を指示していたら、こんなモダンな帯にはならなかったにちがいない。いい仕事をしていただいたと感激もひとしお。
どのくらいの布があれば名古屋帯が仕立てられるとかいうことは皆目わかっていないのだが、面白い帯になるんじゃないかを感じる嗅覚だけはどうやらあるみたいだ。きものなんていうわざわざ面倒くさい格好を道楽でするんだもの、人と同じじゃつまらない。かといってキワモノだったりエッジが立ちまくっていたりするきものを着たいわけじゃない。そう思ううちに、布を帯に・・・なんてことにも手を出し始めてしまった。あーこりゃこりゃ、だ。
そして、先月の
名古屋・月日荘での田中昭夫氏の展示販売会で今度は大判風呂敷を買い求めてきた。これももしかしたらいつか帯になってしまうのかも・・・。今しばらくは風呂敷としてはたまた首巻き代わりとして愛用していく予定。