フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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「MY BLUEBERRY NIGHTS」を観る。

 去年の夏に「ワルボロ」を観て以来ほんとに久しぶりの映画。上京して10年以上たつけど、こんなに映画を観なかったのは初めてだ。”鑑賞復帰作”は最高の映画だった。

 監督はウォン・カーウァイ。一番好きって言うくらい大好きな監督。「天使の涙」は好きな映画10本のうちに入る。彼がアメリカで初めて撮った作品「MY BLUEBERRY NIGHTS」、主演はジュード・ロウとノラ・ジョーンズ。出演者が白人になっても、まさしくカーウァイ・テイスト顕在の映画だった。もう、心の底から大満足。嬉しくて嬉しくて、コロナとライムを買って帰宅。家酒はほとんどしないんだけど、なんだか「乾杯!」な気分だったから。

 もう、しょっぱなからウォン・カーウァイの世界。彼の手にかかると、二枚目ジュード・ロウも街にいるふつうの兄ちゃんになる、「天使の涙」での金城武がそうだったように。特別感が消えて誰にでも起こりうる物語を紡ぐ担い手になる。

 この監督の作品が好きな所以は、感情のあわいを描くのが見事だから。目立った事件は起こらない。日常感を保ったまま、物語が切なく優しく進行する。切なさはどこまでも切なく、優しさはどこまでも優しく叙情的。それがちっともくさくないから観ていてしらけることもない。いつかどこかで味わったような想いがよぎり、心がきりきりする。年とともに涙腺が緩むって言うけど、緩みっぱなしだった。
「MY BLUEBERRY NIGHTS」を観る。_a0025490_23202929.jpg
 いつも売れ残っちゃうブルーベリーパイ。「残るには何か理由があるはずよ」と言うエリザベス。「ただ選ばれなかっただけだよ」と答えるカフェの主のジェレミー。失恋したての彼女は選ばれなかったブルーベリーパイに自分を見るように毎夜そこを訪れてパイを食べる。そんな彼女を優しくフォローする彼の前から突然彼女は旅に出てしまう。その旅でさまざまな何かを喪失した人々に出逢ううちに彼女は強くしなやかに回復していく。自分の軸を取り戻し生まれ変わるための300日の旅路。その先々でそのときどきの想いを手紙にしてジェレミーに送る・・・メールもインターネットも出てこない。時代に関係なく、人が持ちうる普遍的な感情が描かれているから、きっとこの作品はいつ観たって色褪せてないだろうし、伝えたい想いを伝え続けることができるだろうって思った。極めて自然な感情の流れがあって、打ちのめされても立ち上がり回復することができる人の根源的な強さをも描いていると思った。

 叶うとか叶わないとかに関わらず、誰かに一心に恋をしたくなるような、そんな映画。ウォン・カーウァイ監督はまたも素敵な宝物をもたらしてくれた。感激ついでにあたしも恋がしたいぜ・・・。


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Commented by ebi at 2008-04-17 10:21 x
私も先週観ました。
前評判は高かったけど、監督がこのキャストでこういう内容でどんな
感じになるのかなと思っていたけれど、ウォン・カーウァイはウォン・カーウァイでした。
すごく映像も素敵だったし、観終わってからもとても嬉しい気持ちになりましたよ。よかった。
Commented by naomu-cyo at 2008-04-19 01:49
ebiちゃん・・・ほんとよかったねえー。ますますウォン・カーウァイが好きになっちゃった。登場人物の心語りの台詞にいつもどきっとするんだけど、今回もそうだった。何度も見たくなっちゃう作品になりそう!
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by naomu-cyo | 2008-04-16 23:20 | 映画 | Comments(2)