フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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相当面白かった藤沢周平「密謀」。

 箱根湯本での撮影から帰京する電車の中で藤沢周平の「密謀」を読了。久しぶりにぞくぞくするほど面白い歴史小説だった。戦国末期の動乱期、家名を残すため謙信公が築き上げた「義」の精神を貫くため、時勢をつぶさに読み戦ったもののふの姿が見事なまでに描かれていた。

 ずいぶん前の大河ドラマで江守徹が演じた石田三成にとても好感を持てたのがきっかけで、三成観が180度変わった。そのときのイメージに近い三成像がこの「密謀」でも描かれていた。秀吉没後、家康に歩み寄る豊臣恩顧の大名が多くある中で、三成は大恩忘れず豊臣家への忠誠を一途に貫く。その三成と親交があったのが本書の主人公・直江山城守兼続。三成が秀吉への「義」を貫いたように、景勝もそこに寄り添う兼続も上杉家の「義」を貫いた。三成は処刑され、上杉家は減封。徳川の前に敗者となったわけだが、まばゆいほどの潔さに読んでいて心が震えた。

相当面白かった藤沢周平「密謀」。_a0025490_2265896.jpg
 秀吉から絶大な信頼を得ていたうえに三成と親交まであった上杉家がなぜに関ヶ原の戦いに参加しなかったのか。戦国末期から江戸に移りゆく時期を描いた歴史小説を読んできてその点がわからなかった。それがこの「密謀」を読んでクリアになった。決してひよったのではなく、臆病風に吹かれたのでもなく、上杉は上杉の家訓に従ったまでのこと。読みながら「ああもったいない、勝機を逃した」と歯がみしたけれど、上杉家にとっては天下分け目の戦いに勝つ云々よりもまず、謙信公という信仰のような存在が第一にあった。それゆえに徳川の世になって減封されても恥じることなく誇りを維持しえたのだろう。上杉は上杉の、三成は三成の、自らにふさわしい戦い方を選んだということだ。そういうことがわかっていろんなことが腑に落ちた。

 この戦国末期でもうひとり気になる武将がいる。大谷吉継。らい病を患いながらも戦い散ったこの武将の関ヶ原に至る過程も知りたい。何かいい歴史小説はないかしら。
Commented by oka-chan at 2009-01-24 12:53 x
いつか機会があったら。ぜひ直江津にほど近い春日山城趾を訪ねてみてください。
美濃や三河や遠江に比べても、当時の雪深い地方の山城がどんな風に築かれたか興味深いものがありますよ。
春日山城趾はとくに土塁がよかったですねえ、私には。

大谷吉継でいい本があったら私にも教えてください。
名を残すだけの人物だったでしょうね、私も好きな大名のひとりです。
数年前に旧暦の関ヶ原合戦日にあわせて
友達と墨俣から関ヶ原まで合戦ツアーやったことがあり、
途中、大谷吉継の墓地をへも行き、
路傍の野菊とお酒をお供えしてきました。いい思い出です。
(女一人で行くにはやばいような、畑のわきのうっそうとした
くら〜〜い場所の奥の小高い場所にありました。
その傍らにちゃんと五助のお墓もありましたよ)



Commented by monday_panda at 2009-01-25 02:20
こんばんは。普段は歴史小説、時代小説はまったく読まないのですが、先日、電車で読む本がなくなった時に、会社に転がっていた藤沢周平の『橋ものがたり』を読んでみました。時代背景や言葉遣いが難しいのかと思っていたけど、読み始めると簡単に物語の中に引き込まれてました。意外に好感触だったので続けて『秘太刀馬の骨』も読破。なんでもそうですが、食わず嫌いはよくないですね。人がおすすめするものは一度は手にとってみなければ。。。
Commented by naomu-cyo at 2009-01-25 02:38
oka-chanさん・・・「土塁」とはまた渋い!(笑)そんなにたくさんの城見物をしたわけではないですが、やはり熊本城はかっこよかったです。合戦跡地もたどってみたいし武将の墓参りもしたいし・・・。国内で十分行ってみたいところだらけです。あ、和歌山城から見つめる紀ノ川の流れも素晴らしかったです。
Commented by naomu-cyo at 2009-01-25 02:50
monday_pandaさん・・・素敵なカードをありがとうございました!そしてわたしも「橋ものがたり」を読みました。時代設定が江戸というだけで、ふつうに短編小説として読めてしまうくらい入りやすい作品たちでしたね。「秘太刀馬の骨」はまだ読んでないのですが、映画になった「蝉しぐれ」、ドラマ化された「風の果て」は読みました。双方心に沁みいる作品でした。司馬遼太郎も池波正太郎も同様にするっと読めちゃいますよ。超おすすめなのは隆慶一郎「一夢庵風流記」と「吉原御免状」です。とにかく主人公がかっこいい!作家の武将たちに捧げる愛情がとてもよく伝わる作品です。
 わたしも食わず嫌いが多々あります。人にはあれこれ勧める(押しつける?)くせに自分は勧められたものになかなか気乗りしなかったりします。
 それにしても。monday_pandaさんの会社に藤沢周平作品が転がっているなんて意外!アート本だらけのイメージなもので。
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by naomu-cyo | 2009-01-23 02:28 | 読書 | Comments(4)