フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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時代が生んだ徒花・川島芳子の生涯が花開く。

 24日、大路組「Lady BAT」の初日。ゲネプロ前にぎりぎり会場入りし、恒例のロビー写真展の準備をイラストレイターの京子ちゃんとともに急ピッチで進める。今回の舞台のフライヤーイラストは彼女の描き下ろし作品。写真はすべてわたしが撮影。舞台関係の仕事で初の共演だ。

時代が生んだ徒花・川島芳子の生涯が花開く。_a0025490_1404289.jpg
 ロビー写真についてはおいおい語るとして。14:00から大道具・照明・音響も全部入って本番同様に通す。それをひたすら撮影。台本は頭に入っているし、通し稽古も数回見物したから、大体の役者の動きは把握してある。おかげで気持ちに余裕をもって臨めた。夢中でシャッター切った。このシーンのあの人の表情がいいんだ、とか思い出しながら客席を動き回った。とにかく撮りどころ満載だったのだ。ひとつたりとも撮りこぼしたくない気持ちだった。

時代が生んだ徒花・川島芳子の生涯が花開く。_a0025490_141278.jpg
 撮影に集中しているはずなのに終盤にいたって撮りながら泣けてしまった。芳子の生涯があまりに哀れだ。決して愛されキャラではない彼女。時代に翻弄され血に翻弄され理想に燃え破れ、心の支えを一枚一枚はがされ、とうとう処刑台にその命を散らしてしまった。清朝王女で日本人に養女に出された彼女と、日本人で中国人に養女に出されたもう一人の喜子(李香蘭、山口淑子がモデル)とでは、運命がくっきりと分かれた。誰にも守ってもらえなかった芳子と守られて日本に戻ることができた喜子と。終末にいたってその差が容赦なく表現される。

時代が生んだ徒花・川島芳子の生涯が花開く。_a0025490_1421938.jpg 時代物とはいえ、とてもわかりやすい。登場人物それぞれの立場が至極明解。芳子を取り巻く男たちにはそれぞれの思惑なり気持ちがあって最初は彼女の前に膝まずき、最後には付き人の小坂以外はみな彼女から離れていく。前半と後半で彼女の立ち位置は180度変わってしまう。

その芳子を熱演するのが15年来の友人・おぉじのりこ。去年の春頃からこの舞台の構想を逢えば必ず語っていた彼女。今日ゲネプロを撮ってみて、彼女がやろうとしていたことの大半は叶ったんではないかと感じた。友人であることの贔屓目など一切なく、すごくいい芝居だ。予想を遥かに超えて素晴らしかった。心から、関われたことを光栄に思う。



 芳子「人を殺すことは罪。しかしこの国の歴史は血で書かれている。僕の名も血で書かれるだろう」

 甘越「無理だよ。彼女はもう、歴史に組み込まれてしまった」


 撮っていて胸が熱くなった。時代がもっていた熱気、彼女の情熱が塊になってこちら側に去来する。助からないのはわかっているのに、つい思ってしまう、「彼女を置いていかないで、彼女をひとりにしないで」と。
 

 大路組「Lady BAT」は24日から28日まで品川六行会ホールにて。27日の夜、28日の公演後に音楽を担当したPONYのライブがロビーであります。平日分のチケットはまだ余裕があるそうなので、この機会に是非会場に足を運んでみてください。詳細は大路組のウェブサイトにて。http://www.Oojigumi.com/
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by naomu-cyo | 2009-06-25 01:43 | お芝居 | Comments(0)