フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

立川志ら乃真打ち昇進大作戦

 19日。紀伊國屋サザンシアターへ、立川志ら乃さんの真打ち昇進を賭けた落語会の撮影に出かけてきた。

 楽屋周辺はどことなく緊張をはらんだ空気が漂う。志らく師匠も楽屋入りしており、お弟子さんたちもぞろぞろやってきていて挨拶が交わされる。わたしも師匠と志ら乃さんにご挨拶。はりつめた空気にこちらも感染し、緊張を伴いながら機材の準備。

 志ら乃  「だくだく」
 志らく  「黄金餅」
  仲入り
 志ら乃  「子別れ(通し)」
 志らく師匠による講評

立川志ら乃真打ち昇進大作戦_a0025490_3115841.jpg 高座が始まり撮影を開始すると、緊張していたことも忘れ一挙手一投足を見失わないよう集中する。体調はそんなに良くないと高座前に話していたけれど、そんな様子は微塵も感じられない。いい意味ですごく志ら乃さんらしい高座だなと感じて楽しくなる。以前聴いたときよりも無駄がない「だくだく」だったように思う。

 師匠の「黄金餅」、聴くのはたしか初めて。大変そうな噺というイメージがあるけれど、師匠にかかるとテンポよくとんとん噺が展開していく。願人坊主の西念が溜め込んだ銭を餅にくるんで飲み込むシーンのすさまじさは圧巻。金兵衛の何がなんでも貧乏を抜け出してやるという執念もものすごい。志らく師匠の「黄金餅」は西念と金兵衛の銭に対する妄執を見事に活写しつつも決して重苦しい展開にはならず、どこまでも軽快で小気味よかった。

 志ら乃さん「子別れ」。人情噺というくくりになる噺だけど、ふだん取り立てて人情噺だからどうのという気持ちもなくほかの噺同様な心持ちで聴いている。が、志ら乃さんの人情噺は好きだ。くさくないからいい。思いが重すぎない感じだから構えずに聴ける。志ら乃さん版「子別れ」は、久しぶりに我が子と妻に逢った熊五郎が戸惑いつつ照れつつある様子が人間味あふれていて素敵だった。志ら乃さん、いいお父さんになりそうだよなあと関係ないことにまで想像が及んだ。そう、志ら乃さんの人情噺って人間味にあふれて人物が立体的に感じられるんだ。そしてそこがとても魅力的だなあと感じる所以のひとつだ。

立川志ら乃真打ち昇進大作戦_a0025490_3124519.jpg
 志らく師匠と志ら乃さんが高座に並ぶ。志らく師匠曰く「噺に江戸の風を吹かせて欲しい」と。具体的な落語の見せ方聴かせ方の話があり、ふだんの心つもりにも触れ、「不快な落語はやってない」「談志の孫弟子の中でいちばん真打ちに近いわけだからハードルが高くなるのはしようがない」等々の言葉が出てくる。舞台袖で撮影しながら話を伺って、師匠が弟子に向けたなんとしても乗り越えてみせろ、客を納得させてみろ、という気持ちが強く感じられた。なんだかとてもしみじみした。濃い時間だった。

 結果、今回で昇進を決めることはできなかったわけだけど、去年のトライアルのときの講評よりもずっと具体的な指摘だったように思う。あと一歩というところまできているのだなと思った。志ら乃さん自身の手応えはどうだったのだろう。来年の高座に注目だ。とにかく一年お疲れさまでした。そして撮影の機会をいつもありがとうございます。次回の独演会は2月3日です。


 ギャラリーを更新しました。武藤奈緒美ウェブサイト「むーちょで候。」はこちらから。
http://www.mu-cyo.com/
名前
URL
削除用パスワード
by naomu-cyo | 2009-12-23 03:13 | 落語 | Comments(0)