立川志ら乃真打ち昇進大作戦
2009年 12月 23日
楽屋周辺はどことなく緊張をはらんだ空気が漂う。志らく師匠も楽屋入りしており、お弟子さんたちもぞろぞろやってきていて挨拶が交わされる。わたしも師匠と志ら乃さんにご挨拶。はりつめた空気にこちらも感染し、緊張を伴いながら機材の準備。
志ら乃 「だくだく」
志らく 「黄金餅」
仲入り
志ら乃 「子別れ(通し)」
志らく師匠による講評
高座が始まり撮影を開始すると、緊張していたことも忘れ一挙手一投足を見失わないよう集中する。体調はそんなに良くないと高座前に話していたけれど、そんな様子は微塵も感じられない。いい意味ですごく志ら乃さんらしい高座だなと感じて楽しくなる。以前聴いたときよりも無駄がない「だくだく」だったように思う。
師匠の「黄金餅」、聴くのはたしか初めて。大変そうな噺というイメージがあるけれど、師匠にかかるとテンポよくとんとん噺が展開していく。願人坊主の西念が溜め込んだ銭を餅にくるんで飲み込むシーンのすさまじさは圧巻。金兵衛の何がなんでも貧乏を抜け出してやるという執念もものすごい。志らく師匠の「黄金餅」は西念と金兵衛の銭に対する妄執を見事に活写しつつも決して重苦しい展開にはならず、どこまでも軽快で小気味よかった。
志ら乃さん「子別れ」。人情噺というくくりになる噺だけど、ふだん取り立てて人情噺だからどうのという気持ちもなくほかの噺同様な心持ちで聴いている。が、志ら乃さんの人情噺は好きだ。くさくないからいい。思いが重すぎない感じだから構えずに聴ける。志ら乃さん版「子別れ」は、久しぶりに我が子と妻に逢った熊五郎が戸惑いつつ照れつつある様子が人間味あふれていて素敵だった。志ら乃さん、いいお父さんになりそうだよなあと関係ないことにまで想像が及んだ。そう、志ら乃さんの人情噺って人間味にあふれて人物が立体的に感じられるんだ。そしてそこがとても魅力的だなあと感じる所以のひとつだ。
結果、今回で昇進を決めることはできなかったわけだけど、去年のトライアルのときの講評よりもずっと具体的な指摘だったように思う。あと一歩というところまできているのだなと思った。志ら乃さん自身の手応えはどうだったのだろう。来年の高座に注目だ。とにかく一年お疲れさまでした。そして撮影の機会をいつもありがとうございます。次回の独演会は2月3日です。
ギャラリーを更新しました。武藤奈緒美ウェブサイト「むーちょで候。」はこちらから。
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