フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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「墨汁一滴」。

 正岡子規の「墨汁一滴」を読んでいたら泣きそうになった。

 この人の俳句はもちろんのこと、短歌もまっすぐに心に沁み入ってくる。ちょうど春の頃の日記を読んでいる。身体の痛みに息も絶え絶えになり、そう遠くはないであろう死期を自覚しているというのに、作品世界はなぜにこんなに静謐なのだろう。


 いちはつの 花咲きいでて 我目には 今年ばかりの 春行かんとす

 病む我を なぐさめがほに 開きたる 牡丹の花を 見れば悲しも

 世の中は 常なきものと 我愛づる 山吹の花 散りにけるかも

 別れ行く 春のかたみと 藤波の 花の長ふさ 絵にかけるかも

 夕顔の 棚つくらんと 思へども 秋待ちがてぬ 我いのちかも


「墨汁一滴」。_a0025490_11212016.jpg ある年の5月4日の日記、「しひて筆を取りて」と題して十首詠まれてあった。日によってはかなり強い調子で俳句や文学の批評を展開しているけれど、こうして詠まれた歌の中にその激しさは感じられない。表向きは命の短さを嘆きあきらめてはいても、しおしおとくたばってたまるか、というキラリ光る執念が垣間見えるような気もする。

 3月14日の「子規の日めくりカレンダー」の句が素敵だった。

 寝られぬを 恋ときかるる 弥生哉

 今読み進めている時点では「墨汁一滴」の中に子規の恋愛めいた文章は見られない。その革新的な創作活動や壮絶な闘病生活にはスポットが当たるけれど、恋の部分はどうだったんだろう。眠れないほどに恋いうる相手が、いたのだろうか。


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by naomu-cyo | 2010-03-18 11:22 | 読書 | Comments(0)