ようやく、本を読む気になってきた。
2011年 08月 16日
テレビの中の甲子園球場で、球児たちがサイレンとともに黙祷する姿。そして最初に観た戦争映画が「はだしのゲン」の実写板だったこと。うちの母なりの平和教育だったのだろう。これがきっかけで随分と戦争関係の書籍や映画に触れた。
予備校に通っていた頃、英語の授業で配られた英文に「after war」というセンテンスが出てきた。先生が「ところで皆さんはこれを『戦後』と安易に訳すると思いますが、今はまだ戦後だと思いますか?それとももう戦後ではないと思いますか?」と尋ねた。わたしはどっちって答えたんだっけ・・・。どっちを選んでもそう思う理由まで問われる授業だった。何をもってして「戦後」渦中なのか、何が基準でそうじゃなくなるのか、ということなどを。
そんなことを思い出しながらも正午に黙祷することなく、終日事務所でデスクワークをしていた。飽きてくると、届いたばかりの本を少しずつ読んだ。これが作業を放棄したくなるほど面白い・・・「美は乱調にあり」(瀬戸内晴美)。関東大震災のどさくさに紛れて社会主義者・大杉栄とともに虐殺された伊藤野枝について書かれた小説。撮影で関わった花組芝居・大野裕明氏の舞台「東京モダンガールズ」を観て、伊藤野枝の激しく短かった人生に興味をもったのだ。
それが徐々に回復してきたのが最近よくわかる。まず読書に集中できるようになった。娯楽に飢えていることに気付いた。ここ数ヶ月ずっと仕事しっぱなしだった反動でもあるけど、兎に角もっともっと出歩きたい、観たい聴きたい読みたい、逢いたい話したいという欲がどんどん湧いてきた。
震災前の感じを取り戻しつつあるけれど、決して同じにはいかないだろう。起きてしまったから。そしてまだその爪痕は生々しいままだから。なんにしても東北のことを心にかけながら、ゆこう。