フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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「Crafts Fair Matsumoto」の会場にて〜その1〜

 今回初めての松本にして初めてのクラフトフェアを訪れたわけだが、そもそもこの大イベント自体を知ったのがごくごく最近で、それも参加する陶芸家の寺村氏を通じてのことだった。

 仕事の山がひと段落して時間だけはけっこうある、日帰りできる距離だし行ってみよう、幸い天気もいい・・・ってんで、いつもよりちょっと早起きして新宿から特急あずさに乗ってひと眠り、2時間半で山に抱かれた街に着いた。わたしの人生、計画性は皆無だが思いつきによる行動は多々ある。遡ること10年程前にも、こんなふうにして思いつきで富良野のイベントに参加する友人に逢いに行ったっけ。

「Crafts Fair Matsumoto」の会場にて〜その1〜_a0025490_12375582.jpg
 会場に着き、その広さと出展ブースの多さにめまいを起こしそうになり、まずは目的である寺村氏のブースを見つけねばと他ブースを垣間見ることなく探す、探しまくる・・・。並べられた器を見て、ここかなと思ったら果たしてそうであった。初めまして、カメラマンの武藤です、と名乗り、先日のメールとお電話の礼を伝える。逢う以前からすでに共通の知人のいることが判明していたため、緊張せずに済んだ。さらっとお話した後、並べられた器たちに見入っていたら、ぐいっと心をわしづかみにされるお皿を発見。寺村氏の作品を扱っている吉祥寺・mist ∞でも感じたことだけど、彼の器は見てたちどころに盛りたい料理や食事風景が浮かんでくる。自炊ライフかれこれ20年近くとはいえ、大した料理が作れるわけではない自分の食生活を助けてくれるにちがいない、と頼もしく思える器なのだ。

「Crafts Fair Matsumoto」の会場にて〜その1〜_a0025490_12381263.jpg
 そんな寺村氏に「渋くて実直な器だなって感じました」と伝えたところ、「器は料理の脇役だと思って作ってます。そんなことをある料理家の方に話したところ、その方は『料理も食卓の脇役なのよ』と話され、その言葉に鳥肌が立ちました」という話を披露してくださった。

 「食事」って、ものをいただくだけのことではないのだ、とはっとした。さまざまな側面を内包したひとときなんだ。食事に至る過程も含め、それこそ遡って生産者の日々の努力や苦労も含め、そして料理も器もそこで交わされる会話も空気も時間帯もおなかのすき具合も、場所も着ている洋服すらも、すべて内包しているのだ。わたしの場合で言えば、横長のランチョンマットの上で日々展開される、猫を膝にのせてのひととき。毎日繰り返されることでありつつも、まるっきり同じではないひととき。

 お逢いしてじかにお話できてよかった。なんだかとても大きなヒントをいただいた気がする。
Commented by しー at 2012-05-31 14:04 x
こんなにステキなお話をシェアしてくださって
ありがとうございます。

『料理も食卓の脇役なのよ』から、
むーちん自身が展開する
遡って生産者の日々の努力
料理も器も
そこで交わされる会話も
空気も時間帯も
おなかのすき具合も、
場所も着ている洋服すらも

これだけ多角的に考えられるってとこが
あなたの陰影ある写真作品に
現れてるってことなんだな~と

しみじみしました。
Commented by naomu-cyo at 2012-06-01 23:37
しーさん、5月は時間がたーんとあったから、いろんな手仕事を見にほうぼう歩き回ってました。カメラマンのような商業ベースではなく、あくまで人の生活に寄り添った形で作品を作りそれを販売することで糧を得ていく、という手仕事の人たちの生真面目さや真摯さ、地べたに近い感じ、しなやかさ、強さ・・・いろんなものを感じました。器でわたし自身の「食事観」が変化してきた気がします。これまでも「食事」を楽しんできたけど、今、もっと楽しいの。食べることだけじゃなく、食事に関わることをいろいろ楽しんでます。器とそれを作った人のおかげだなあー!
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by naomu-cyo | 2012-05-29 12:38 | フォトダイアリー | Comments(2)