フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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久しぶりに林真理子作品を、ば。

 今日は朝も早よから出張取材で須磨に出かけてきた。担当氏はご実家の大阪を起点に行動されたので、行きも帰りもひとり新幹線。ゆえに黙々と読書し時々まどろんで往復約7時間をだんまりで過ごした。

 きのう井上ひさし「一週間」(新潮文庫)を読み終えたところで、須磨への道中にはどの本を読もうかと在庫の未読本の中から選んだのは久しぶりの林真理子作品の「花」(中公文庫)。たまに彼女の作品を読む。過去何冊か読んだ中でも、移り変わる時代を縦軸に据えた女の物語系の作品が殊更に面白かったので、それに類するとおぼしきこの「花」を選んでみたのだった。

 それにしても、なんでまたこのタイミングで読んだかなあ・・・とちょっとびっくりした。彼女の作品を読むと、否応なしに自分もまた女であるということを強烈に意識させられる。恋愛とか結婚とか出産とかそういうことを、物語の中の出来事という枠を超えて、自分に置き換えて痛烈なまでに考えさせられる。胸の中がざわざわしてくる。今は深追いせずに様子を観察していたい感情まであぶり出される。嗚呼、と天を仰ぐような心地になりつつも、面白いから本を閉じられないんだけど。

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 祖母・母・娘三代にわたる女の物語を往復の新幹線で読み終えて、帰宅してひといきついたら母と話したくなったので実家に電話を入れた。父の日のプレゼントが届いたかも確認したかった。こないだも長話したばかりなのに、今日も結局長話になった。先週からたて続けに取材で伺った障害者の作業施設の話をする。わたしには知的障害をもつ従姉妹(母にとっては姪)がいるので、従姉妹の近況をききつつ、真剣な話になった。そんな流れで地域のコミュニティーの話になり、90歳過ぎの大家さんがとても元気だという話になり、不意に母が口にしたのは、「別に結婚して子どもを産みなさいと言うつもりはないけど、ひとりでいつまでも暮らしていくのはさびしいことだと思うのよ」という言葉だった。珍しい、これまでほとんどそういうことは言ってこなかったのに。毎日不規則で人と接している時間が長いから、ひとりさみしさを噛み締める時間というのはさほどないのだが、母は母で見かねることがあるだろうし、心配にちがいない。「おととしくらいから周りの人にいろんな人を紹介してもらってはいるんだけどもねー」と言うと、「まあ、ここまできたら誰でもいいからかまわず結婚しろとは言わないわよ」と。どっちなんだ、母・・・。

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 母娘でそういう話をあまりきちんとしてこなかった。逐一知られるのが照れくさいしうまく伝えられない気がして、そのての話題は避けるようにしていた。初めて彼氏ができたときは「彼氏ができた」とだけ伝えて、その後何も言わないでいて、「うまくいっているの?」と訊かれたときにはもう別れていた。長く一緒に暮らしていた彼と別れたときも数年黙っていて、「あんた実はもう一緒に暮らしてないんじゃないの?」といきなり訊かれて、「うん、別れた」と答えたら、「やっぱりね。そんな気がしたのよね。しょっちゅう逢っているわけじゃないのに、親の勘ってすごいわ」と感心していた。それがあってからわたしも開き直ったのだろう、そういう話をするようになった。今はまだ報告できるようなネタはないけれど、諦めているわけではないことは伝えているし、自分ひとりくらいどうにかしていける才覚はもっているように生まれついている気(親に感謝)がしていることも伝えてある。安心していて、と胸を張りたいところだが、まあ、それも無理な話かな・・・。

 そんなこんなな話になったのも、おそらく今日読んだ「花」が影響しているのではないかと思われる。おそるべし、林真理子作品。わたしの深層心理のみならず母の心までもあぶり出したか。
Commented by chisa714piano at 2013-06-19 22:16
初めまして。
美しいお写真と 極上のエッセイのような文章、いつも楽しみに読まさせていただいております。

林真理子さんの作品、自分でも秘している女の恥ずかしい部分とか、
深層心理をうまくえぐり出しますよね。
「花」 新聞で連載していた作品のなら飛び飛びで読んだことあります。

今日の水に写った竹林のお写真がことの他美しく コメントさせて頂きましたm(_ _)m

Commented by naomu-cyo at 2013-06-20 00:44
chisa714pianoさん・・・初めまして!コメントありがとうございます。そしてお褒めの言葉をいただき、恐縮です、ハイ・・・。
 林真理子作品を読んでいると、作者の観察眼の鋭さにぎょっとさせられますねえ・・・。こわいこわい。ちなみにわたしは「白蓮れん」を読んでから彼女の作品をたまにですが読むようになりました。
 この写真たちは中尊寺で撮ってきました。こういうある意味定番な風景にやたらと惹かれます・・・。
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by naomu-cyo | 2013-06-18 02:35 | 読書 | Comments(2)