神保町の古本まつりで「仏教の民俗学」という本を見つけた。そのことを仕事でご一緒した僧侶の方に伝えたら、「そんなこと知ってもお仕事にはなんの役にも立ちませんよー」と笑われて、はたと気づいた。そういえば、学生の頃から役に立たないと言われているものにばかりかまけてきた。大体、教職課程を専攻し将来教師になろうとか研究者になろうとかっていうならともかく、そうじゃないのに文学部国文学科なんていう潰しのきかないと言われている学部を専攻したあたりから、将来役に立つとか立たないとかをまるで考えないで行動するようになるのは一目瞭然だったのだ。
それでもなんでも、その役に立たないとおぼしきものたちの集積でこうしてどうにかこうにかご飯を食っていられると思えば、役に立たないと世間で言われているものはわたしには大いに役に立っているのである。これでみんなにも役に立ってしまっていたら、わたしなんぞおまんま食い上げになっているやもしれぬ。
へえ、こんなこと役に立つんだ、と意外に思ったことがある。それは歴史ネタで、地方ロケが続いたときに広告代理店のおじさまがそのロケ地の歴史を飲みの席で話してくれたことがあり、前のめりになってリアクションしていたら、「武藤さんは歴史物好きなんだ。女性で珍しいなあ」と喜ばれ、その後大変円滑にコミュニケーションがはかれた。たまたま好きなだけだったものが、実地に生きたパターン。こういうことはけっこうある。それは、写真を撮るという仕事がつまるところコミュニケーションを軸にしているからだろう。思いのほか自分に向いている仕事だったようだ。ある部分においては人生はとてもうまくできている。仕事の現場では生きてくるネタが婚活飲み会だと全く生きてこなかったりもする。うん、人生ってうまくできているなあ・・・(詠嘆調)。
役に立たないと思われるようなものでも、わたしの人生にはなくてはならないものだったら、その時点で役に立たないものなんかじゃない。最近せっせと仕入れている仏教周辺のネタ、いつかどこかで生きてくるだろう。