ややこしや ややこしや〜「まちがいの狂言」を観る
2005年 05月 18日
客席では黒装束に強面のお面をかぶった人たちが口々に「ややこしや、ややこしや!」と呟きながらうろうろしてる。みんな同じ姿なのに、観察しているとそれぞれに個性があるのがわかるし、強面さえもかわいらしく思えてくる。
シェイクスピアの「まちがいの喜劇」が原作。一組の夫婦、その子どもである双子の兄弟、さらにその従者の双子の兄弟が海難事故に巻き込まれそれぞれが離ればなれになってしまう。24年たち、白草に住むかたわれが従者のかたわれ・太郎冠者を連れて自分のかたわれを探す旅に出、 そのまま帰って来ないふたりを探してさらに父親が旅に出る。そしてたどり着いた地・黒草でややこしい騒動が展開される。まさか双子が二組いるとは思っていないから、「さっき渡した銭はどうしたんだ?」「いや、銭などいただいておりませぬ」、「奥様が食事にしようと待っております」「わしには妻などおらん」など、人間関係の糸はもつれにもつれ、えらいこっちゃのてんやわんや。
萬斎氏は双子の従者・太郎冠者を演じているのだが、白草の太郎冠者として出てきて引っ込んだと思ったら、黒草の太郎冠者としてすぐ出てくる。くるくるくるくる、ぴょんぴょんぴょんぴょんと舞台を動き回るその動きはとても軽やかでリズミカルで美しい。シェイクスピア「真夏の夜の夢」に出てくる妖精・パックをこの人が演じたらさぞかし見事だろうなあ・・・なんてなことも思ったり。行き違い、取り違え、勘違い。シェイクスピア作品にはよくあるエピソード。それが狂言に見事とけ込んで、観ていて楽しいったらない。
最後は離ればなれになった同士がちゃんと出逢えて大団円、拍手喝采のラスト。もう大満足で、何度でも観たい気持ちでいっぱいになる。芸ここに極まれり!という心地。伝統芸能でもあり、エンターテインメントでもあり。狂言という芸能の様式も芝居的なところも自然に共存していた。
http://www.mu-cyo.com/
伝統だけにしがみついている、というよりも、その伝統芸能の凄さにやられまくり、というのが私の感想です。
何だよ、狂言ってメチャクチャ面白いじゃん!何で今まで知らなかったんだよオレ!って印象でした。
今回の作品も確かにシェイクスピアですが、狂言であることには全く変わりはなくて、普通の芝居とは全然言えない内容です。
野村家以外でも、先日「誰でもピカソ」にご出演なさっていた「お豆腐狂言」こと茂山千五郎家もかなり面白いと思います。野村家と共演したこともあります。京都の方々ですが、関東圏でもよく公演されています。
まだ狂言をご存じない方は、ぜひオススメしたいと思います。
今度お能の公演があるとき誘います。演目と演目の間に狂言があるのだけど、ここでまず目が覚めます(笑)。