フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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本屋まみれ

 ちょっと前に近所の本屋が店じまいした。街には3軒の本屋があったのだが、店じまいしたのは3つ中比較的スタンダードな本屋だった(あくまで主観だが)。残念でしようがない・・・というほど通ってなかったし、ほかの2軒にしても(わたしの読書傾向が決してマニアックなわけでもないのに)痒いところに手が届かなさすぎる本屋なので、つまるところ自分の住む街に信頼のおける本屋が存在しないことになる。これは由々しき、哀しき事態だ。

 「離島の本屋」(朴順梨/ころから)、「善き書店員」(木村俊介/ミシマ社)、「本屋図鑑」(本屋図鑑編集部、得地直美/夏葉社)と、立て続けに3冊の本屋さんの本を読んだ。こんな本屋が生活圏内に欲しいとうなりたくなるような本屋がいくつも紹介されていたり、延々本の話をしていたくなるような書店員さんが紹介されていたりで、充実の本屋さん本タイムであった。掲載されているどちらかの本屋さん、わが街に支店出しませんか・・・?

 特筆すべきは、この3冊の出版社がそろって小規模出版社であるということだ。小規模だからとひとくくりにするわけではないが、3冊からはそろって作り手や書き手の伝えたい想いや愛情が行間からにじみ出ていた。読みながら、こういう本に関わった人たちへの嫉妬すら憶えた。きっといつまでも自分の手元に残しておくにちがいない本たちだ。以前出版関係の人から、月ごとに出す本のノルマがあって、一冊の企画が頓挫したおかげで翌月に出す予定の本を繰り上げてなんとしても出版にこぎつけねばらならないなんてことがある、という話をきいたことがある。この本を世に出したい、たくさんの人に読んで欲しい・・・という動機からではなく、社内ノルマの消化のために本を出すという話は衝撃だった。読者がおきざりになっているんじゃないかと思った。

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 小さい出版社の素晴らしい本に出逢うと、わたしはいったいどういう方向に行きたいんだろうと自分の価値観の有り様をぼんやり考える。大手出版社と仕事をするのはそもそもの憧れだった。けれど、小さい出版社の作り手や書き手の想いがより生々しい本から撮影オファーがきたら、それもまた大きな悦びなのだ。田舎ものだから、メジャーなものに憧れる気持ちはある。そりゃあでっかい仕事したいさ(規模のでかいものはギャラだっていいし)。でも、でも。そういうのだけがイコール悦びではないことを、わたし自身はとうに気付いている。どんなふうに仕事をしていきたいか。どんなものを積極的に撮っていきたいか。そろそろ煮詰めていく時期にさしかかっているように思う。仕事があるだけありがたいんだけど、一歩踏み込んでいかないと、欲しいものも望む状況もきっとわからなくなるばかりだ。

 本屋さんの本たちは、そういうことを考えるわたしに大いに刺激になった。自分にとって、よりよい仕事ライフとはどんなものなのか、見極めてゆかねば。
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by naomu-cyo | 2014-05-12 22:25 | 読書 | Comments(0)