フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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久しぶりに「キッチン」など。

 お盆休み最終日。なんにもなければ金曜から帰省のつもりでいたが、結局写真の差し替えに夏風邪気味とあって、先送りにした。そんなわけで、行くつもりだった知人の舞台も展示も放棄して、この週末はゆるゆると過ごした。明日から暑さに負けずに働くためにも静養第一だ。

 本棚の断捨離の産物、ダンボール2つ分の書籍をきのう「みんなのとしょかんプロジェクト」に送った。さらに断捨離はゆるゆると続く。リリースするかどうかの境界線上にある本数冊を、きのう今日地べたと平行になって過ごしながら読み耽った。

 やっぱりこれは手元に残そうと思った一冊が吉本ばななの「キッチン」。正直、この作品の文体はあまり好きではない。ちょっと奇を衒っているように感じてしまうせいかと思うが(作者はそんななつもりはなかろうが)、読み直し始めたらそこは気にならなくなった。最初に読んだとき(20代半ばくらいだったか)に引いた赤の傍線の箇所と、二回目に読んだときに引いた黄色の傍線の箇所は、今回読み直してもやはり胸にくるものがあり、さらに今回新たに胸にきた箇所もあって、なかなかに読み応えがあった。今はもう傍線を引きながら読んだりはしないが、かつてはそんなふうに読み、その箇所を日記に書き付けたりしていたものだ・・・懐かしい、なかなかおセンチだった頃の自分・・・。

久しぶりに「キッチン」など。_a0025490_22582254.jpg
 「キッチン」に同時収録されている「ムーンライト・シャドウ」が今回殊更に響いた。奥付を見たらなんと、この作品は作者の卒業制作でこしらえられたものなんだそうな。吉本ばなな22歳のみぎりの作品に、四十の自分はいたくいたく感動したのであった・・・。

 携帯もメールもまだ存在しない頃に綴られた作品で、それらを介さずに人と人とが向き合う生々しさが今となっては新鮮にすら思える。すんごく伝えたいことは、やはり面と向かって言うべきなんだろうなあ・・・なんてことを、改めて思う。生身の自分を相手の目の前にさらして逃げずに伝えることの大事さってものが、ある気がする。
Commented by たきぐち at 2014-08-22 07:13 x
同じようなことをやっていて(読み直すという作業だけ)、『キッチン』から『TSUGUMI』までは、自分が考えるばなならしさがあると思いました。『ムーンライト』然りです。それは20代の頃にも思っていたことで、私が成長していないだけなのか、大人びていたのか(笑)。ばななと離れたきっかけが何だったのか?そしてばななが違うなと思い始めたのがなんだったのか分かりませんが、同時代作家であれば鷺沢萠なんかにも同じことを感じたのを覚えています。鷺沢の場合は己の境遇ということで、創作に対するスタンスが変わり、最後は……となってしまう訳ですが。そんな元・文学青年より(笑)。
Commented by naomu-cyo at 2014-08-22 13:33
たきぐちさん・・・わたしは真面目なばなな読者ではなかったんですが、それでも思い出したように読んではいたのに、いつの間にか読まなくなってしまってました(以前新聞連載の小説を読んではいましたが、書籍化にあたり購入はせず)。わたしの場合はだんだんとどろくさい作品とか民俗学・土地の匂いのする作品に惹かれるようになった流れがあり、行間からたちのぼる「匂い」の趣向がばなな方面とは違った方向を求めるようになったからな気がしてます。鷺沢萠、一冊だけ読んだことが。映画化された「F」がタイトルに入っている作品で、ぴんとこなかった気が・・・。そういう読書遍歴を思うと、何度読んでも飽きない太宰作品ってなんなのだろうとか思います、ハイ(元・文学少女より、笑)
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by naomu-cyo | 2014-08-17 22:59 | 読書 | Comments(2)