フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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もうじき逢える

 予定より半月くらいだったか早く帝王切開で産まれた友人Kの第二子は、ダウン症のほかにいくつもの疾患を抱えていて、心臓やらなにやらの手術を終えてようやく家に連れて帰れたのがつい最近のこと。出産祝いとねぎらいを兼ねて逢いに行きたいね、と同級生仲間のCちゃんとやりとりをしていて、状況が状況だからわたしが先に立つよりも一児の母であるCちゃんのほうがKの事情により心理的に寄り添えるだろうと思い、様子を伺ってもらっていた。年の瀬、ようやくみんなの都合がそろって逢いに行けることになった。

 Kの息子が、ダウン症の可能性がある(7ヶ月時点)、やっぱりそうだった(出産後)、と知らされたとき、Kがこの先しんどくなるときがあったら、子どもの前ではいつも笑っていられるように、わたしやCちゃんの前では思いきり泣かせてやろう、と思っていた。と同時に、Kの息子とコミュニケーションをとれるようになりたい、彼の抱えるダウン症の世界を理解できるようになりたい、と強く思った。それをCちゃんに伝えたら彼女も強く共感してくれて、「Mくん(Kの息子)は生まれて早々わたしらに学びの機会をくれているね」とメッセージをくれた。ほんとだ、とてもほんとだなあと思った。

 そんなとき、「101年目の孤独 希望の場所を求めて」(岩波書店)に出逢った。高橋源一郎という作家はもちろんのこと知っていたけど、作品世界にまでは手を出していなかった。学生時代、クラスメイトの女の子が「源ちゃん源ちゃん」と呼んで彼の小説をたたえていたけれど、当時純文学浸りで故人の作品ばかり読み耽っていたわたしには現役作家の作品は遠くて、結局「顰蹙文学カフェ」を読むまで高橋源一郎なる人がどういう作家なのかまるで知らなかった。

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 9月に毎日新聞で彼へのインタビュー記事を読み、それに涙を催すほど心動かされ、今回「101年目の孤独 希望の場所を求めて」を取り寄せたのだが、以前取材で訪れたことのあるダウン症の人たちが通うアトリエ・エレマン・プレザンも紹介されていて、この本と出逢うタイミングとわたしの状況がずばりシンクロした。今、とても求めていた本だった。

 ちょっとくらいえらそーにしてもよさそうな立ち位置にいながらそんなところは皆無で、むしろ存在感を消しながら前傾姿勢で腕を組みそっと世間を窺っているような、でも発言する場では誤解をもたれないよう言葉を尽くして持論を展開する、なんていうか奥ゆかしさというかはにかみというか、そういう感じの作家さんという印象がこの本を読んだ後残った。実際のところはどうなんだろうか。お逢いしてお話を伺って、撮ってみたい。そんな日がいつか来る前に、彼の本をくまなく読んで備えておこう。
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by naomu-cyo | 2014-12-15 02:54 | 読書 | Comments(0)