老猫の粗相への対処法
2015年 09月 10日
初物を楽しんだのはなにも人間だけではない。その翌日、自宅飯にも秋刀魚登場。老猫とシェアするつもりで味はつけずにホイルで包んで蒸し焼きに。換気扇をまわし台所の窓を開けていても匂いが流れるのだろう、猫が足元まできて珍しくぎゃあぎゃあ騒ぎ落ち着かない様子。「サンマ!サンマ!早よくれ、サンマ!」と急かされている気がしてくる。
食卓を整え、猫用の皿に秋刀魚をほぐしてのせる。小骨さえも見逃さないよう丹念に調べあげ、「はいよ」と猫の前に差し出すと、くんくん、くんくんと、地べたを這うようにいつも以上に鼻をひくつかせ、ようやく皿を探しあてたと思ったら、一度も顔を上げることなくがつがつ、がつがつと、一心不乱に食べた。食欲減退で生きられるかどうかの瀬戸際だった日々を思い出すと隔世の感がある。思わず涙が出そうだった。
こうした日々の中で、老いの実態を猫によって少しずつ学んでいる気がする。獣医さんは「人間も犬も猫も老いは一緒です」と以前話していた。人間に比べて犬や猫のほうがもっている時間は短いけれど、老いの様相というものにおそらくほとんど変わりはないのだ。猫の尊厳を損なわずに心地よく老いの時間を送らせてあげたい。そこまではできなくてもここまではまだまだできるんだぜ、という老猫の気概みたいなもんを拾い上げて、よっしゃそれじゃそこに合わせてみようじゃないか、と応じてあげたい。木更津の託老所の代表が話していた「相手の都合にとことん付き合う」という言葉が最近頻繁に脳裏をよぎるようになった。