フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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煙草=コミュニケーション・ツールの実践

 昨今肩身の狭い喫煙者ではあるが、こないだほど、煙草吸っててよかったと思ったことはなかったかもしれない。

 過日、落語協会3階で「東京かわら版」の取材撮影。8年ほど前にも一度巻頭に登場したことのある師匠で、前回は煙草を吸っている写真も掲載された。煙草をお吸いになる姿が殊更にさまになる師匠で、わたしの中では落語界のクラーク・ゲーブルだ。

 「かたくならずにざっくばらんに行きましょうや」と椅子に腰掛けるや、「煙草は吸うの?」と編集Kさんに尋ねる師匠。彼は吸わない人なので、代わりに「わたしが持ってます」と差し出すと、メンソールかあ女の人はメンソール好きだよなとおっしゃいながらお財布から60円を出して「ハイ、これ煙草賃。シャレだよ、シャレ。よく前座にやるんだ」と言って一本取り出し火をおつけになった。これでわたしのほうの気持ちがだいぶほぐれた。師匠がこのノリならあれこれお願いしても大丈夫だろう・・・。

煙草=コミュニケーション・ツールの実践_a0025490_0535230.jpg
 取材途中で「やっぱりメンソールじゃないのがいいな。武藤さんが好きなの買っていらっしゃい。それもらうから」と千円札をお出しになる、「おつりは戻すんだよ」と笑いながら。小走りで買いに出かける。煙草を抜き取るときの師匠のえへへっていう笑顔、いたずらがばれた少年のようだ。「医者に止められてるんだよ」とおっしゃいながら「いやあ、(煙草が)進むなあ」と今気付いたかのようにおっしゃる。いろんな師匠の煙草を吸う姿を見てきたけれど、この師匠の煙草とともにある空気はなんだか落語の登場人物みたいだ。長旅の途中、茶屋であるいは六郷の渡しの土手で腰をおろして一服つけているみたいな。せかせかしたところのない大らかな、煙草を吸っていることさえ忘れてしまっている忘我の境地のような・・・そんな喫煙図。

 落語に関する師匠の思うところをたくさん伺った。こちらも思いつくままに質問を投げかけた。カメラマンとして関わっているくせに、すっかりまぎれこんでた。これも煙草のやりとりがもたらした間合いな気がする。煙草を渡しながら一歩近寄ってみたらそこには8年前と変わらぬ落語熱や気概が充満していた。渡しておきながらなんだけど、医者に止められている煙草をちょっと控えつつ、どうかこれから先も末永く高座に上がり続けていて欲しい。
Commented by ひら at 2015-10-05 16:49 x
噺家となると、煙草を吸うのも粋ですねえ。

> せかせかしたところのない大らかな、煙草を吸っていることさえ忘れてしまっている忘我の境地

こんなふうになりたいもんです。
Commented by naomu-cyo at 2015-10-06 01:27
ひらさん・・・どうせ吸うならあんなふうに・・・と思うような喫煙図でありました。1時間の予定のインタビューが結局2時間近く伺えたのは煙草の効用かもしれません。毒にもなれば薬にもなるのかなって。
Commented by 有賀亭頑馬 at 2015-10-06 22:24 x
僕は気管支喘息の持病があるので煙草は吸えないのですが、
煙草を吸う姿の格好良さには憧れているので、
元々吸わないのに禁煙パイポを買ってときどきくわえています(笑)。
Commented by naomu-cyo at 2015-10-07 02:51
有賀亭さん・・・禁煙パイポ!久しぶりの響きです。
次号のかわら版、楽しみにしていてください。どこまで掲載されるかわかりませんが、お話もとても面白かったです。
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by naomu-cyo | 2015-10-05 00:56 | 落語 | Comments(4)