フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


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野良猫のお食事処

 ああ、夏が暮れる。

 愛猫ぱち存命の頃からちょくちょく庭を訪れていた目つきの鋭い野良猫(オス、ブサと命名)は相変わらずやってくる。よくぱちのお余りをあげていたのだが、ぱちが逝って後はこれもぱちが結んだご縁なのだろうとお供えの缶詰をあげるなどしていたら、ほぼ毎日やってきて時には居続けなどし、すっかり常連になった。とはいえ、野性のタチは失っておらず、飯で釣って触ろうとするとものすごい速さで引っかかれる。大したもんである。

 この夏、近所で子を産んだ母猫が時々訪れるようになった。来ると網戸越しに甘ったるい声で、にゃあにゃあ、来たよ、にゃあにゃあと鳴いて知らせる。ほかに白黒の大柄のもやってくるのだが、こちらが姿を見せると縁台の下にひょいっと隠れてしまうほどに臆病で、その姿を稀にしか見かけない。

 ブサ向けに出した飯をあてにしてほかのもやってくるのだろう、なんとはなしに猫用のお食事処が常設状態になっている。そのブサと母猫が相見える機会があった。ブサが居続けを決め込んでいるのだから当然である。これまでブサの声など聴いたことがなかったのだが、母猫を前に聴いたこともないような声で歩み寄っているのだが、どうにもつれない態度を示されている様子。それが証拠に、母猫はブサが近付くと軽快にその場を去る、ブサは不思議な声をたてながら追いかける。人んちの庭(わたしのじゃなくて大家の庭だが)で女を口説くなんて、ブサったらなんて無粋なんでしょ、などと思うが、こちらのことなどとんと眼中にない様子である。それにしても、ブサの毛艶が良くなったように見えるのは気のせいか。飯の供給が安定しているからなのか恋ゆえか。

野良猫のお食事処_a0025490_00552712.jpg
 ぱちが逝ってから10ヶ月になる。去年の夏、ぱちの看病をしながら詠んだ俳句もどきを部屋に貼ってあるのだが、今時分には食欲が快復し、一気に弱ったとはいえ小康状態だった。去年の夏はぱちとともにあった。それ以外に何があったのかなんて、微塵も憶えていやしない。今年の夏はどうだったろう。振り返れるようで振り返れない。毎日それなりにしっかり生きているつもりでも、過ぎてしまうと忘れてしまうことのほうが圧倒的に多くて、記憶に残すあるいは残るには強烈な刺さり方をしないとなかなかに困難なことなのかもしれない。日常は流れゆく。流していっているのかもしれない。

 

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by naomu-cyo | 2016-09-03 00:56 | | Comments(0)