去年の暮れのこと、急遽富山へ日帰りの撮影が舞い込んだ。日帰りだろうと遠出することそのものが好きなので、日程を調整して引き受け、嬉々として北陸新幹線で向かった。以前訪れたときとは全く違う駅構内。新幹線が開通するというのはその場所にとってかなりの影響力があるんだなあと思わず見渡した。
取材場所が
富山市ガラス美術館内にある
カフェで、その近辺でロケ撮影の予定。建物内でのロケに申請がいらないんだそうで、この柔軟さというか緩さというかが勝手知らない土地では殊更にありがたい。この建物、建築に疎いわたしでも存じ上げている
隈研吾氏の設計で、圧巻のこしらえであった。
二階のフロアから上を見上げると天窓があるのだが、そこに向かってエスカレーターが交差しながら上昇しており、その周辺を構成しているのが縦に並べられた膨大な枚数の木の板。見上げて思わず「おおっ!!!」と声が出た。まるで山を登っていくような形ではないか!
山のことにも疎いのだが、この風景はもしかしたら立山連峰をあらわしているのではなかろうか。エスカレーターで登っていきながらまるで天をめざして山登りしているかのような気分を味わえそうだ。そして、ここで使われている木材は富山産なのではなかろうか。見てたちどころにそんな想像で頭の中がいっぱいになり、楽しくなってくる。建築のうんちくも山登りのうんちくもまるでわからない門外漢のわたしですらいろいろに想像をめぐらすことができる。それって奥行きのある自由でいい建築ってことなんじゃないかな。
仕事ついでに大いに目を楽しませてもらった。遠出案件の醍醐味のひとつ。