ほんとにあっという間に、それこそ疾風の如く過ぎ去った9月だった。
毎日仕事ばかりしていたかというとそんなわけでもなく、しかし何もしない日というのもなかった。仕事をしない日は存分に遊んだ。舞台を観て落語をきいて能を観てフェスに行って、そしてひさしぶりに旅行をした。行き先は鳥取で、東京で出逢い故郷である鳥取に戻った友人たちとの再会を楽しんだ。太平洋のそばで育った自分にとって、日本海側とは海のある向きが異なる。今回初めて倉吉〜鳥取間で山陰本線に乗り、そのことを実感した。ところかわれば海と自分の位置関係も異なるのだ、ということに今更ながら気付いた。
滞っていることもあれば始動したこともあり、足踏みしているようでちょっとずつ前に・・・というか、変化の萌芽が見られたような気がした9月だった。めげることよりは励みになったり喜んだりすることのほうがほんの少し多く、自分の価値観を無理に変えてまでおもねらなくてもいい、と思える機会が何度かあった。
それから、自らの忘れる能力に改めて驚いた日々でもあった。かつてとても大好きだった人と初夏のあたりからなんとはなしに連絡が間遠になっていって、まあお互い忙しいんだし仕方ないねと思っているうちに、その人を思うことがどんどん少なくなっていき、気付けば忘れているのだった。同じように、しばらく仕事をいただいていないクライアントさんのこともどんどん忘れていく。以前はいちいち気に病んでいたのに、だ。自分の内に新たに取り込みたいことが日々あって、そうなると関係性が薄れた方面にまでいちいち気をまわしている余裕がなくなるのだ。あっぱれ、忘れる能力。
一方で全く衰えない記憶というのもあって、先日撮影で訪れた先で出逢った体操部の顧問の女性と、自分が十代の頃に憧れた体操選手の話を延々とした。次から次へと当時の日本代表やらソ連代表、ルーマニア代表の選手の名前と記憶に残る名演技が思い出されて、「ものすごいファンだったじゃないですか!」と驚かれた。自分でも驚いた、全くさびついてない記憶力に。
とにかく本を読んでいたくて、これまでこまめにチェックしたり投稿したりしていたSNSと距離を置いている。本が売れないと言われて久しいが、良書は次から次へと世に放たれている。一冊でも多くそれらに目を通し体内に取り込みたい。目下はまっているのが、三浦佑之氏の古事記に関する著書。娘である三浦しをんさんの作品も大好きだが、お父上の作品もかなり面白い。古事記がこんなに面白いものだとは。学生時代の自分に教えてあげたいくらいだ。
明日も早い・・・と思いながら、寝てしまうのがなんだかもったいなくて夜更かしする晩も多い。庭で虫が鳴く音がきこえてくる。10月もめいいっぱい仕事して遊んで本を読もう。頭の隅に営業とかウェブのリニューアルとかも思い浮かべつつ・・・