習慣性と中毒性のあるきもののウェブサイト「シンエイ」で、ある日「うわぉ!」と思わず声をあげてしまう帯に出逢った。それはモニターで見てもおおらかさが伝わってくる、いい仕事にちがいないと確信する型染めの帯で、頭の中にぱっと某型染め作家さんの名前が浮かんだ。しかも価格は2000円。くすみや汚れ、小穴まである。つまり状態がさほどよろしくないということが書いてあった。しかしそれでひるむわたしではない。すでにこの帯を見た瞬間に反射的に買い物かごに入れ、悉皆屋に持ち込んで直してもらう気になっていた。
夏場のことだったのですぐにこの帯を締めるわけではないが、早々に悉皆屋「いちまつ」さんに持ち込んだ。解いて洗い張りして仕立て直してください、と注文。仕立て直しのときの柄や色の見せ具合を店主と相談し、ひと月くらいたってからだろうか、出来上がってるよと連絡をいただき馳せ参じた。
おおっ、やはり見違えるように別嬪になっている!改めて、いい帯でないの!と惚れ惚れして眺める。お直し代は12000円。2000円の帯を12000円かけて直すのは阿呆と思う人もあるかもしれない。が、14000円で絶好の帯が手に入るならお安いってもんだ。こんなおおらかな型染め帯、こんな価格でお目にかかれまいよ。めっけもん、いい買い物したとほくそ笑む。こんなことまでしているから、ほんときりがない。道楽とは楽しくもおそろしいものであることよ。