11月16日、早朝。空路でオーフス→コペンハーゲン→ダブリンへ。後ろ髪ひかれる想いでデンマークを後にする。美しい街、大人の街だった。コペンハーゲン空港で喬太郎師匠が珈琲をご馳走してくれた。「ヤナギーヤ」と呼ばれ、カウンターに受け取りに。ここの喫煙所は果てのほうにあった。

アイルランドの入国審査、審査官がかなり執拗に質問をしてくる。アイルランド滞在の詳細のみならず、全旅程表を見せよ、と言う。各人に渡されたファイルを見せてなんとか通過できた。馬場さんが英語を話せる方で助かった(クララはEU加盟国出身なため、窓口が違った)。

デンマークの空気と一変していた。同じ欧州であってこうも違うのかというくらい、肌感覚が違う。ダブリン空港の喫煙所界隈の空気がちょっとやさぐれた感じというか油断ならない感じというか。空港の安全管理に携わると思しき男性たちの体格が大きくて、威圧感が半端ない。コーク市内行きのバスに乗り込み、ここから3時間のバスの旅。朝が早かったこともあり、ほぼ爆睡。コーク市内が近づき窓外を見やると、あちこちに緑の旗が揺れている。夕日が沈みかけていた。大きなバスターミナルに到着し、タクシーで宿へ。こじんまりした一軒家が並んでおり、B&B(ベッドとブレックファーストを供する)と呼ぶとのこと。一階でウェルカムティーをいただく。ここでいただいたスコーンがばかに美味かった。現地落語会の主催者にあたるコーク大学のティル先生と合流。先生は日本に滞在していた時分にM-1に出場したことがあるとかで、流暢な日本語とジョークを話す。

この日の夜はミステリーツアーに参加することに。コークからコーブへ電車移動し、ツアーガイドの男性と合流、街中のミステリーポイントを説明を受けながら見てまわるのだ。いくつかを見てまわるうちに師匠がおっしゃったんだったか、「起、承はあるけどオチがない」のひとことに一堂納得する。全然こわくはないが歴史を感じる話が多い。ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲はアイルランド出身で、彼のものした「怪談」もオチらしいオチがない話ばかりだった。物語の伝承とはそういうものなのかもしれない。

ツアーが終わって、アイリッシュパブに入る。タイタニック号が最後に寄港したのがこのコーブなんだそうで、そのことを説明するプレートが店の外側の壁面にたくさん飾ってあった。へえぇー!である。あの、タイタニック号が・・・と思うのも、ディカプリオ主演のあの映画を観ていたからだ。入ってすぐのスペースにはアルコールを出すカウンターがあり、奥のスペースは生演奏を聴ける場所になっていた。めいめい自由にくつろぐ。みんな地元の黒ビールを飲んでいる。日本で飲むよりもずっと口当たりがよくて、するする飲めてしまう。そうそう、地元の人が気安く通うこういう店に入りたかったのだ。それにしても師匠、酒場が似合う方だなあ。カウンターで注文する姿はすっかり馴染んでいる人のそれだった。

この日の晩御飯はファストフードの店へ。師匠と正太郎さん、馬場さんはフィッシュアンドチップスを注文、ものすごいボリューム!そこへ、隣りの席から陽気な酔っ払いのおじさんが親しげにやってきて、こちらのテーブルに混じってきた。おそらく常連でいつもこんなふうにてらいなくお客さんに混じっているのだろう。肩を組んできたので3ショットを撮った。師匠、ちょっと複雑な表情で一緒に写っているのが、なんとも面白い。