2月、まだまだ寒いとはいえ、下旬ともなると梅がほころび、日に日に春が近づいてくるのを目に見えて感じ取れるようになる。この時分になると、冬仕様の分厚いコートとおさらばしたくてたまらなくなる。今日は日中あったかそうな予感がしたから、コートの下に重ねていた分厚いカーディガンを着るのをやめにして、コートもロング丈ではなくショート丈に切り替えてみた。もうそれだけで下半身が軽くなる。颯爽と歩いている気がしてくる。
ひとシーズン前の春コートを冬場のセールで手に入れた。青色のコットン素材で、着れば着るほどくたくたになって身体になじみそう。これまで春先に着ていたリネンのコートは、あちこち擦れて薄くなって、裏に施したあて布が表から透けて見えるほどになってしまった。かれこれ8年くらい着ていただろうか。そのメーカーの服を今はすっかり着なくなってしまったのだが、このコートだけはどうにも愛着があって手放せないでいた。しかしここまでくるとそろそろおさらばか。別れがたく、冬の間見えるところに掛けたまま過ごした。
きものを着るようになってから、ちょっとだけ季節を先取りする意識が芽生えた。梅が咲く前に梅柄の帯をするとか、年が明けたら明るい色をどこかに使うとか、その程度のことだが、心なしか軽やかな気持ちになる。冬から春への切り替えは特にそうで、寒い寒いと縮こまっていた身体も心も春に向けてひとあし早く解き放ちたくなる。3月1日があったかそうだったら思い切って青色の春コートに切り替えようか。朝晩はきっと冷え込むだろうけれど、我慢しちゃおう。冬に向かう寒さと違って、春に向かう中での寒さを我慢するのはおそらく気持ちがいいはずだ。春が来る。花粉症を克服した身には、なんと魅惑的な響きだろう。