5月から、木ノ下歌舞伎主宰の木ノ下裕一氏による「平家物語」のzoom講座を受講している。もともとなんとはなしに「平家物語」が好きで、コロナで仕事が落ち着いた状態なので時間がある、劇作家が「平家物語」をどうとらえるのかにも興味があるということで、聴講生ではなく参加型の受講生枠に申し込んだ。
十三巻に及ぶこの物語を月1の講義で1年間。講義時間は3時間、課題講評の時間が1時間強。けっこうなボリュームだ。新たに知ることがあまりにも多く、いや、なんとはなしに好きだというわりにあまりにも知らないことが多かったのだ、へえーへえーと面白がっているうちにあっという間に時間が過ぎる。
物語の流れのみならず、人物像や物語の構造にも切り込んでもらえるおかげか、「平家物語」が次第に立体的に感じられるようになってきた。これは今回のテキスト「覚一本平家物語」が琵琶法師による語り本であることにも起因していると思われる。語りで聞いて理解できるということは、聴く側がおのおのイメージを浮かべやすい言葉遣いや構成になっているのだろうから。平安時代末期の風景なんて知る由もないのに、頭の中にビジュアルを浮かばせるのだからすごいものだ。
受講生には毎度課題が出される。これが私にはひどく難しい。他の受講生はおそらく演劇関係が多い様子で、大半の方が課題をそれぞれに解釈して一本の物語を創作してくる。思いつきと勢いだけで書いた初回の課題は、講評時間に触れられもしないほどの代物で、他の方の課題を読んで自分の次元の低さを思い知った。
しかしめげている場合ではないのだ。私はこの講座を受けることで物事を深める癖をつけたいのだ。これまで自分のことばかりあーだこーだ考えて堂々巡りを繰り返してきたが、自分ではない対象を客観的に見て深めることを身につけたいのだ。
8月提出の課題は「有王」。鬼界ヶ島に流刑になった俊寛の死を見届け菩提を弔う役目として登場する人物だ。ここのところずっと、有王のことばかり考えている。「有王」を写真で表現するには。どうアプローチしたら有王を描けるか。ふと、こんなとき北島マヤならどう有王を理解し演じるのかななんて漫画の主人公を思い浮かべ、二次元も三次元もまぜこぜ、愚にもつかぬことに頭をめぐらせている。時間があるっていいことだな。なんだか少し豊かな気分だ。