市川準監督「あおげば尊し」を観る
2006年 02月 06日
教師であった父のいまわの際になって、「父に最後にしてあげられることはなんだろう」と自らも小学校教師の息子(テリー伊藤)は考える。教え子は誰も見舞いにこない、父はどんな教師だったのだろうか・・・。母は病床の父に昔の卒業アルバムを開いて見せ、一緒に振り返ろうとしているかのよう。
担任しているクラスに死体写真に異常に興味を示す子がおり、この子から「どうして死体写真を見ちゃいけないの?」と訊かれて、「とにかくやめなさい」としか言えない自分がもどかしく、悩んだ末に病床の父にある提案をもちかける。最期まで教師としての人生を全うしようとする父は思い悩む息子に手を差し伸べるようにその提案を引き受ける・・・。
この作品を観ていて、教師というのはほんとに特殊な仕事だなあと改めて実感した。人の成長過程に関わる仕事だ。すごくいい影響を与えるかもしれないし、その逆もありうる。全然記憶に残らない場合だってある。一生恨まれるなんてこともないとは限らない。
自分はこの仕事に向いてないと思い悩んで、飲みながら荒れる教師。「一部の生徒から『先生は冷たい』と言われてますよ」と職員会議で指摘され、「人間として未発達な人間から別にいい先生だなんてほめられたくもありませんから」と息巻く教師。様々な先生がいる。自分が生徒の頃は何も気付かなかったが、先生自身もいろいろ悩み試行錯誤しながらやっていたのだろう。
時折写し出される街の風景。工場地帯の長い煙突から吐き出される白い煙が火葬場のイメージと重なった。ラストシーンは父の葬儀のシーン。たくさんの教え子たちがとり囲み、突然「あおげば尊し」の大合唱が始まる。母も息子も涙を浮かべつつも満足そうな表情。父が最期まで教師として生きたことを誇りに思い喜ぶようなそんなラストだった。
わたしにとっての恩師は高校一年時の担任。社会科の先生らしい大らかな先生だった。年賀状のやりとりを続けている。元気にしてるだろうか。こんな映画を観たら逢いたくなった。何を話すでもないだろうけど・・・。
HP更新しました。今年最初の海。http://www.mu-cyo.com/
誰もが徳という物を教えてくれた先生を恩師と呼ぶのでしようね。
授業が下手でも心に残るいい先生ってかつてはいたように思います。そういう先生が授業の合間に話してくれた先生自身の体験談など、すごくよく憶えてますもの。「恩師」と呼べる人がいるだけまだましなのかな。こういう考えもなんかさみしーですね。