フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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週末の逃避行・4

 大正時代に建てられた「亀井邸」では三好耕三氏の「塩竃浦戸」展が開催されていた。海で働く人たちのモノクロポートレイト。笑顔の写真ももちろんあるが、そのたたずまいや空気感から、海で生きる人たちの壮絶さを垣間見る思い。ここでまた平間氏に遭遇。「いろいろまわってきましたか?」と尋ねられ、団子を食べて神社へ参った旨伝えると、「満喫してますね。いいでしょ、塩竃」と。「ハイ、撮りたくなるところがたくさんあります」とわたし。平間氏お勧めのお寿司屋さんを教えていただく。団子を平らげた直後でまだお腹がすかないからもう少しぶらぶらして食べに行くことにしよう。

週末の逃避行・4_a0025490_893422.jpg ビルドスペースで瀧本幹也氏の写真を見、不意に撮りたくなった道端のおばあちゃんに撮影交渉するも、「昔だったらいいけど今は駄目よ。絶対駄目駄目〜!」と強い拒絶に遭い断念。昔は美貌を誇ったのかもしれない。残念。そこからぶらぶら海へと向かう。途中気になる路地に入っては撮り、大きな工場を見つけては撮りし、港に着いた。島めぐりの船なのか観光客がたくさんいた。ここでぼんやり海を眺め写真を撮る。広々とした空間を前にすると、その空間の中に自分も溶けていくような気持ちになる。

 ひとしきり撮って向かったのは亀喜寿司。初めての寿司屋お一人様。平間氏推薦は大将おまかせコースだったけど、まだおなかがすききってないので盛りの少ない季節の盛り合わせにする。マグロ以外はすべて地元のものなのだとか。ウニってこんなにおいしいものだったのね。美味、美味。カウンター越しに職人さんがあれこれと話しかけてくれる。「塩竃いいでしょ?」ハイ、いいところです。そしてわたしの故郷とどことなく似ているんです。

 ひとりで旅に出かけると、どうしても写真を撮ることに終始し、風景の中・自己の中にどんどん埋没していき、日常とは全く異なって没交渉の時間を送ってしまいがちだ。心の中で自分と対話するようなそんな時間の中で、この街の人たちは訪れたわたしに自分の街を愛しているという気持ちをストレートに伝えてきた気がした。写真展の会場でボランティアスタッフの人たちから「ようこそ〜」と迎えられ話しかけられして、アートってのは興味のある人だけの嗜好品でありとんがったものだという漠然と描いていたイメージが全く違った印象になった。
週末の逃避行・4_a0025490_810678.jpg
 来てよかった。平間氏の写真を見て行ってみたいと思ったわたしは、わたし自身が撮った故郷・日立の写真を見て誰かが「行ってみたい」と思うだろうかと考えた。わたしがとらえる日立はわたしの心の中に収まりきっていて、個人的すぎて、外に向かって鋭く熱く想いを放つ平間氏の写真のような力強さをまだ持ち合わせていないように感じた。そういうことを感じられただけでも、ほんとよかった。ありがとうございます、平間さん。
Commented by なつみかん at 2008-04-01 10:03 x
とてもいい体験をしたんですね。
私も久々に一人旅したい。むーちょさんの瞬発力を見習わなくては!と思うのですが、家で制作するのがメインの仕事だと、どうも近場にちょこっとおでかけするので満足してしまっています。
Commented by naomu-cyo at 2008-04-03 00:43
なつみかんさん・・・とてもいい体験でした。写真を撮る者としてやはり平間さんは憧れの方だったので、そういう方にじかに作品を見てもらい感想をいただいたうえにお話できるなんて!そりゃあ素晴らしいことで。やはり塩竃にあのタイミングで行くべきであったんだなと今回ばかりは自分の瞬発力をほめてつかわします。
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by naomu-cyo | 2008-04-01 08:14 | | Comments(2)