太宰治「人間失格」読了。
2008年 07月 15日
読み返してみたら、そう陰鬱な作品でもないことに気付いた。主人公の行き難さが描かれている。けどそれは決してひとりよがりのものではなく、誰しもが抱えうる一抹の不安感から、目を背けず蓋をせず真っ正直に向き合った果ての作品、だと思われる。だから発表当初多くの人に受け入れられベストセラーになったんじゃないか。
奥野健男氏の解説がまた良い。作品の引用ばかりして結局解説者が何を伝えたかったのかわからないものも多い中で、この人の解説は太宰作品への愛に満ちているがゆえに情熱的で、共感と理解を徹底的に示し、まるで太宰の作品を後世に伝えるために自分は解説者になりました、みたいな文章なのだ。そこにこの人の解説の個性を感じる。引用文ばかりの解説よりもこっちのほうがよっぽど読み応えがある。
今日の撮影の現場で終了後デザイナーの女子ふたりと食事をしている最中に「最近なんの本を読んでますか?」と尋ねられた。「きのう『人間失格』を読み直し終わったところです」と言ったら二人が二人とも「わたしも大好きです、あの作品!」と賛同してくれたのがなんだか嬉しかった。ずっと年下のふたりとの接点が見出せたのも嬉しかった。こんなとき、「やっぱりすごいぜ、太宰治」と思わせられる。発表当時の若者のみならず現代を生きる若者までもとりこにしちゃうんだから。
太宰没後60年を記念しての読み直しはここでひとまず小休止して、今日は太宰好きを公言しまくっている山田詠美の作品を読み始めた。読み出した途端、涙がにじみそうなほど素敵な文章があって、ぐいっと引き込まれる。この人の作品にも時代を越えていって欲しい。
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エイミーさんの風味絶佳だったかもよかったなあ。