フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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撮ったり聴いたり。

 撮影から事務所へと戻る電車の中で、8月も最終日なんだわーと気付いた途端、夏の疲労がどっと身体全部をおおいこむような感覚に見舞われる。今年の夏は夏のわりによく働いた。去年はお盆の最中に毎日がデトックスのような旅をしていたというのに。その反動なのか9月は暇模様。あたしはやっぱり忙しいのがいい。

 小学校の先生をしている友人から「とうとう、この世紀末にあたいすべき日がやってきました」と二学期の始まりをおそれるメールが届く。毎年のことなのですっかり風物詩になった。

 日中、上野の下谷神社で「東京かわら版」の撮影。この神社は寄席発祥の地。境内に正岡子規の句碑があった。

      寄席はねて 上野の鐘の 夜長哉   子規

 たった五・七・五の文字数の中に世界を内包せしめる俳句の面白さに気付いたのは、子規の句が365句集まった日めくりカレンダーを購入してから。情景を言葉で表し、その背後にある感情は言葉の周辺に漂っている。たくさんの句を読みあさってみたわけじゃないけど、中でも子規の句はすごくいいなって思う。剽軽で孤独で素朴でわびしい。


撮ったり聴いたり。_a0025490_9264725.jpg 夜は「志らく一門会」へ。10日に撮影した志ら乃さんの高座写真を持参して伺う。久々に行ってみたけど超満員。夏も終わりだからと夏の噺がいくつかかかる。今まで何度か行ったこの一門会の中でいちばん面白かった。同じ師匠についているのにそのお弟子さんたちのなんと個性的なことよ。ますますこの一門が好きになった。個人的にはたっぷり大熱演みたいな高座は好きじゃなく、ものすごい迫力だったりするのにちゃんとどこかに抑制が効いた高座が好きだ。演者が自分の内部にある熊さんやはっつあん、与太郎や隠居を器用に操っているとでもいうような二重構造が見えるほうが、置いていかれた感がなくて安心してわくわくしながら聴いていられる。

 それにしても志らく師匠の「野ざらし」が聴けたのはほんとにラッキーだった。超ご機嫌な男が出てくるこの噺自体好きだけど、志らく師匠で聴いてみたかっただけに嬉しさしきり。どっと押し寄せた夏の疲れはこの一門会に来たおかげでどこかに消え失せた。さて、と。夏の名残とこれからやってくる秋の気配を楽しむことにしようか。でも突然の大雨だけはほんとに勘弁・・・。


 ウェブサイト更新しました!今月は若手噺家・立川志ら乃さんの真打ちをめざす姿を撮影した写真たちです。http://www.mu-cyo.com/
Commented by guminomi2 at 2008-09-01 15:57 x
おお、優雅な自画像、素敵です。
子規のカレンダー、いいですね。
Commented by naomu-cyo at 2008-09-01 21:37
guminomiさん・・・もう笑っていただこうと思いまして(笑)。ほら顔がひきつっているでしょ?駄目なんですよねー、写真撮られるの。で、着付けを習っている時分に先生に撮っていただいた写真です。着物撮影のお仕事こないかなあ・・・なんて思いまして、ははは。子規の日めくりカレンダーは松山の記念館で購入しました。去年使っていたのですが、毎日破り捨てていくのはもったいないと思って、まだ破らずにとってあります。素敵ですよー。
Commented by choko+ at 2008-09-02 23:47 x
俳句とか短歌とか、あたしも好きです。
最近、くだらないことにめくじら立てそうになった時に読み直すのが、この一句。

馬鹿中の馬鹿に向かって馬鹿馬鹿と怒った俺は馬鹿以下の馬鹿  枡野浩一
Commented by naomu-cyo at 2008-09-03 09:30
choko+さん・・・うーん、いい一句です(笑)。「母ははははと笑った」に通じる韻の面白さも感じます。
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by naomu-cyo | 2008-09-01 09:27 | 落語 | Comments(4)