フォトグラファーの武藤奈緒美です。日々感じたことや思ったことを、写真とともにつれづれなるままに。


by naomu-cyo
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どうして撮りたくなったのかを探しに。

 日々、「あ、この形面白い」とか「今の光加減がいい」とか思って写真を撮っていることって多い。仕事においてもその傾向は見られ、「このアングル素敵」とか「今の表情とてもダンディー」だとか思ってシャッターを切ることもままある。

 先日、暗室を借りにN氏の事務所へ伺った。作業の合間合間にN氏と話していて痛感するのは、自分のものの見方の底の浅さと甘さ。N氏の話を聞いていると、この人が写真という平面的な表現にいかに奥行きを添えているかがとてもよくわかる。絵作りの上での奥行きのみならず、ふだんのものの見方やとらえ方、考え方などがおのずと総動員されて絵作りがなされているということ。何事にも造詣が深く、ただ知っているのみならずそれにちゃんとN氏の意見なり思うところなりが伴っている。雑学大好き、なだけとは訳が違うのだ。

どうして撮りたくなったのかを探しに。_a0025490_981829.jpg
 かくいうわたしは雑学好きで、しかもとても偏った方向性にのみそれが働くので、日常的に生かす機会は少ない。別にひけらかすとかそういうつもりは毛頭ないけど、N氏のように自分の考えを加えてみなで共有できる話に広げていくほどの深みを伴っていないのだ。そういうところは撮った写真に如実に表れるんではないかと思う。「形が面白いから撮った」「このアングルがかっこいいなあと思って撮った」・・・という表層的な表現に終始しているように感じる、自分の場合。

 たしかにそれも大事。面白いと感じること、かっこいいと感じることはとても大事だ。ただそれは瞬発力でしかないように思う。マンネリを感じてしまうのもそこに起因していると思われる。その奥にある本質的なものをあぶり出す力がわたしには欠けている。写真を撮り始めて10年以上たつわけだし、そろそろ「撮るのって楽しー!」だけの次元から脱却していかねばならんとこの頃切に思う。もったいぶった意味を加えようってんじゃなく、表現としてたしかな厚みのあるものを生みたいと心から思う。ずっと写真を続けていくためにそういうことをおろそかにしてはいけない。

どうして撮りたくなったのかを探しに。_a0025490_985173.jpg
 年明けに、念願のベオグラードに行けるかもしれない動きが出てきた。行きたきゃぱっと行けばいいだけの話なんだけど、やれ政情不安らしいだの英語圏でないだの(英語も話せないくせに!)怖いだのと、つまるところ臆病風吹かして結局行かないできた。それでかねてよりの知人で、まだユーゴスラビアという国があった頃にベオグラードに留学していた方に「行く機会があったら声をかけて欲しい。やっぱりひとりで乗り込む勇気がありません」と正直な気持ちを伝えたところ、年明けに向こうの大学の招聘に応じて行くかも、ならばそのとき一緒に行きますかとの返事をいただく。一気にリアルな話になった。

 海外にぽーんと行けちゃう人は何を尻込みしているのかと思うだろうけど、ひとりで国境越えすることにたくさんの勇気がないと行けない自分は行動に移すまでにひじょうな時間がかかるのだ。自分はベオグラードで何を見たいのだろう何を知りたいのだろう。ユーゴの内戦を描いた映画たちと米原万里さんの作品の影響で行ってみたいと思ったわけだが、どうして行ってみたいと思ったのだろう・・・。その「どうして」を探ることが今の自分には必要なんだと思う。
Commented by guminomi2 at 2008-10-11 22:51 x
おお、素晴らしい話。見て、感じて、写真を撮ってきてください。
飛行機にも乗ったことのない私などには夢のまた夢の話。
Commented by naomu-cyo at 2008-10-15 02:43
guminomiさん・・・飛行機すらも「遠出大好き!」「乗り物大好き!」な次元なわたしです。なぜ好きなのか、を突き詰めなければ・・・。そこからかい、ってな感じです。単に「ベオグラード」っていう地名の響きにも惹かれます。ああ、ほんと直感だけの人生に・・・
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by naomu-cyo | 2008-10-10 09:17 | フォトダイアリー | Comments(2)