魅惑の・・・そう、そのての場所に出入りする人にとっては相当魅惑のエリアなのであろう眉山のふもと鷹匠町・秋田町を翌朝雨の中車で巡る。ものの本によると鷹匠町は大歓楽街、秋田町は大遊郭跡地なんだそう。わたしもKさんも女子であるにもかかわらず赤線だの岡場所だのというものに大変興味があるので、前夜のうちに明日は早起きして撮影前にうろつきましょう!とあっさり決まったのだった。

大歓楽街の中にあった病院の看板には「にんにく注射打ちます」「プラセンタ注射打ちます(男性可)」と書かれている。場所が場所なだけに生々しい。元はふつうのマンションだったのでは的建物がソープランドとして使われている。エリアの端にあったラブホテルは平日朝にもかかわらず「満室」表示。二人して古い物件をみつけると「この造りはきっとそうですよ!」「ほらこのガラス窓怪しいですよね」などと車内で大騒ぎ。今は絵画教室として使われている建物、かつてはそのての建物だったであろう痕跡がちらほら。
なぜにこうしたことに関心をもつようになったのか。何も毎夜そこで繰り広げられる行為そのものに興味があるわけではない。時代が移り変わってもなお、そうした場所はそうした場所として依然存在し、昔からの役割を全うし続けているということにまず関心がある。なぜそのエリアが選ばれただのかにも興味がある。興味の発生をたどっていくと、隆慶一郎作品「吉原御免状」に行き着く。この作品を読むと、このての場所が当時の身分制度や芸能と無関係でなかったのがとてもよくわかるのだ。そんなわけでこれはれっきとした民俗学の一分野だろう。